Cluster Navigation System(以下CN)は、学生が履修計画を立案することを、情報収集、他人とのコラボレーション、試行錯誤という側面から支援するためのツールである。CNは「知的創発環境」構築への第一歩として、履修計画を立てる上での学生同士の知的生産活動を総合的に支援し、そこで創発された履修計画に関する知識を蓄積するための仕組みを提供する。
CNにおいて利用者(Customer)は学生と教員であり、エージェント(Agent)は事務室もしくは大岩研究室である。CNがもたらす変換(Transformation)は、履修計画立案における学生同士のコラボレーション作業、同じく試行錯誤の際に行う作業、カリキュラム情報の効率的な取得、そしてコラボレーションや試行錯誤の過程を経て創発された知識の蓄積である。本システムは、大学内のワークステーション端末もしくは大学のネットワークに接続したPC上(Environment)で、学生がいつでも他の学生と協調して履修計画を立案したり、自分の授業選択について試行錯誤したり、履修計画を立案する際に必要な知識や情報を簡単に取得できるような環境(Weltanschauung)を目指すべく、ユーザのアクセシビリティを考慮して、Webアプリケーションシステムとして構築される。
本システムの開発過程には、オブジェクト指向を用いた分析・設計を行った。特にモデルの記述言語にはUMLを用い、その記述法はCatalysisの方法論を参考にした。
具体的には、まず履修を取り巻く現状(ビジネスドメイン)を徹底的についてKJ法を用いて分析し、問題点を洗い出した。そして導き出された問題点をもとに、システムの要求仕様を類推した。
次に現実世界における履修の仕組みをUMLでモデル化し(ドメインモデル)、要求仕様に基づいてシステムを現実世界に配置したときのモデルを作成した。そしてそのモデルをもとに、システムと現実世界の境界、すなわち現実世界からシステムまでの道のり(システムコンテキスト)について分析し、システムのユースケースを導出した。さらにそのユースケースをもとに、システムの静的な構造を表現する概念モデルを作成し、動的な側面に関しては相互作用図や状態遷移図などの動的モデルを作成して表現した。最後に利用するアーキテクチャおよびフレームワークを決定し、それに概念レベルのタイプモデルと動的モデルを適用した実装モデルを作成した。このとき同時にリレーショナル・データベースのテーブル定義も合わせて行った。