練習の前に

[Q] キーボードはこれからも必要でしょうか? そのうち音声入力ですんでしまうのではありませんか?
[A] 音声入力も開発されつつありますが、音声認識はコンピュータが苦手とする分野です。特定の言葉を入力するような限定された目的なら、すでに実用化しています。しかし、どんな文でも対応しなければいけない電子メールやワープロに実用的に使えるようになるには、まだ時間がかかりそうです。
また、たとえ実用になったとしても、問題が残ります。音声は元々、感情を表わすための器官として発達してきたものなので、例えば文字を入力しそこなった時に、「しまった!!」と怒鳴ってしまったりします。人間が聞いている時には、これは入力しようとしている文ではないと分りますが、コンピュータはそこまで判断してくれません。後でカーソルを動かして削除する作業が必要となります。
結局、機械に分かるようにしゃべるよりキーボードを叩く方が楽だということは容易に想像がつきます。
[Q] キーボードを打つのはとても難しそうに思えますが…。
[A] ところが、これは思ったより楽なのです。少なくとも中高年の人にとっては、マウスよりも楽でしょう。マウスは、直ぐに使えるように見えますが、自由に使えるようになるには、数十時間の使用経験が必要となります。キーボードは、人にもよりますが数時間程度の練習で打てるようになります。体で覚えるものですから自転車の練習と同じ程度のものです。むしろ、キーボードは練習しないでも一応使えてしまうことに問題があります。
[Q] どういう問題でしょうか?
[A] 多くの人は練習なしにいきなり使い始めてしまいます。メーカー主導のパソコン講習でもキーボードの打ち方を教えてくれるところはほとんどありません。「自分でやっといて下さい」で終ってしまいます。
[Q] なぜ教えてくれないのでしょうか?
[A] まず、キーボードが自由に打てることの重要性が認識されていません。教える人がタッチタイピングできなかったりします。
また、キーボードが打てるようになるにはある程度の練習が必要ですが、いまパソコンは「買ったら直ぐに使える」をうたい文句にしているため、「練習が必要」なものは販売戦略上むしろマイナスなのでしょう。
[Q] キーボードは誰でも打てるものなのでしょうか?
[A] 打てるようになるまでの時間は個人差があります。特に中高年の場合、それまでに指を動かす作業をしてこなかった人は、ホームポジション(後述)に指を置くことが難しかったり、小指や薬指を独立して動かすことが難しい人もいます。そういう場合は、キーの位置を覚える前に指の体操が必要かも知れません。
しかし、気長にこつこつ練習すれば必ずできるようになります。それに、指を動かすことは老化防止に役立ちます。キーを探しながら一本指で打っていたのでは、老化防止にはなりにくいでしょう。
[Q] タッチタイピングとはどういうことですか?
[A] キーボードや手を見ないでキーを打つことですが、キーを打つことが無意識の動作になります。歩く時にどちらの足を出しているのか気にしないで歩くように、どの文字を打つか思い浮かべるだけで、指が自動的に動くようになります。
目を使うことがないのでブラインド・タッチとも言います。
[Q] タッチタイピングはかっこいいですが、できる人はどれぐらいいるんでしょうか?
[A] 調べたわけではありませんが、日本語のひらがなを完全にタッチタイピングで入力できる人は意外と少ないと思います。パソコン使っている人の1割以下でしょう。
[Q] どうしてそんなに少ないのでしょうか? キーボードを使いこなしている人はもっと多いように見えますが。
[A] やはりキーボードの練習をしないで使い始める人が多いからでしょう。はじめキーを探しながら打っていても、そのうちに「およそのキー位置」は覚えるものです。長く使っていれば打つ速さも上がっていきます。それでもキーを見ないと打てない。こういう人は多いようです。
そういう人は無意識にでも目でキーを「確認して」いるのです。「体が覚えている」わけではありません。
「体で覚える」には相応の練習が必要です。
[Q] 正しい練習をすれば、タッチタイピングはそんなに難しいものではないのですね?
[A] そうです。では、タイピング練習を基本からやってみましょう。

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