9.1 マルチメディアデータの表現方法
アナログ情報とデジタル情報
私たちが普段目にする光景や,耳にする音などもすべて情報の一種であると言えます.最近ではディジタルカメラや,CD,MDに代表されるようにこれらの情報もどんどんコンピュータなどで自由に扱えるようになってきました.今回はこういった画像や音声といった情報がコンピュータでどのような扱われ方をしているのかを学びます.
「情報」の分類のひとつに,アナログ情報とデジタル情報という分け方があります.コンピュータで扱っているのは,後者のデジタル情報です.(→概念編:「アナログ情報とデジタル情報」)
一方われわれが目にしたままの映像や,音声はアナログ情報と呼ばれ,実際にこう言った情報をコンピュータで扱うためには,アナログ情報をデジタル情報に変換する必要があります.(→概念編:「アナログ情報のデジタル化」)
画像データ
一口に画像と言っても,いろいろな種類があります.次のような分類によって整理することができます.
- 時間的変化による分類
- 静止画:写真のように,時間的に変化しません.
- 動画:映画のように,あらかじめ決められた通りに変化します.
- インタラクティブアニメーション:見る人の操作に応じて変化します.
- 次元による分類
- 2次元:平面的な図形から構成された画像です.
- 3次元:立体的な図形から構成された画像です.ただし,表示装置はディスプレイやプリンタなどの2次元的なものしかありませんので,3次元から2次元へ変換してから表示します.3次元の図形データを作ることをモデリング (modeling),視点や照明を指定して,実際に見える2次元画像に変換することをレンダリング (rendering)と呼びます.
- 表現方法による分類
- ビットマップ画像:ビットマップ画像は小さなタイルで作成されたモザイクのように,細かい点の集まりで画像を表現します.このタイルに相当するのは,画素(pixel)です.例えば,直線は連続した画素に同じ色を塗ることによって表現されます.
ビットマップ画像は写真のように,形や色が不規則なものの表現に向いています.編集は画素単位で行います.しかし,モザイクになっているため,画像を移動,拡大,または回転すると画像が汚くなりやすいです.たとえば,拡大すると小さなタイルが大きなタイルで置き換えられたかのように表示され,ギザギザが目立ちます. - ベクトル画像:幾何学的図形の組合わせによって画像を表現します.模式図のように,規則的な図形の表現に向いています.編集は図形単位で行います.ベクトル画像は拡大,縮小,回転,変形,塗りつぶしなどを自由に行っても汚くなることがないのが特徴です.図形の一種としてビットマップ画像を含めることができる形式もあります.
- 圧縮方法による分類
(→概念編:「圧縮と解凍」, 概念編:「圧縮の例」) - 非圧縮:画像データそのままです.
- 可逆圧縮:圧縮した形式で保存や転送を行い,表示の時に元通りに伸長します.GIF(Compuserv Graphic Interchange Format),PNG(Portable Network Graphics)がその代表例です.
- 不可逆圧縮:元の画像のあまり重要でない情報を省略して圧縮します.伸長しても完全に元通りにはなりませんが,可逆圧縮より圧縮率を高くすることができます.JPEG(Joint Photographic Experts Group)形式がその代表例です.
画像データをファイルに保存するときは,利用目的に合わせて適当な形式を選びますが,コンピュータやソフトウェアの種類によって扱える形式が違います.ウェブページでは GIF(Compuserv Graphic Interchange Format),PNG(Portable Network Graphics),JPEG(Joint Photographic Experts Group) などがよく使われます.またその際,ファイル名には必ず,そのファイルがどの形式であるのかをあらわすために例えばGIF形式であれば,「.gif」,JPEG形式であれば「.jpeg」または「.jpg」というように拡張子というものをつけます.それぞれの画像形式の特徴は,CNS ガイドを参照して下さい.
音声データ
音声データは音声の波形をデジタル化して表現しています.原理的には概念編で説明した標本化と量子化を行うのですが,量子化手法や圧縮方式の違いにより,いろいろな形式があります.例えば,MP3 (MPEG-1 Audio Layer 3) は圧縮率が高いので,最近普及しつつあります.
特別教室のコンピュータにはマイクとヘッドホンがついていて,AU 形式の音声ファイルの録音と再生ができます.余裕のある人はこちらを見て下さい.