1.2 レビューの方針と評価方法

あるチャートを「記述内容が読み手に誤解を与えず,理解しやすいかどうか」という視点で調査すれば, 優れていると評価できる部分と,改善した方が良いと評価できる部分があるはずである. 優れている点を評価することは,作成者の向上心を高め,教育的にも重要なことであると考えられる. しかし,本書で紹介するレビューにおいては,チャートを調査した結果, (特に優れていても)問題がない部分は指摘の対象外である.

この理由として,HCPチャートの作成は非常に奥が深く,特に初心者が作成したチャートには不良が多発するのが常である. チャートをレビューによって効果的に改善していくためには,まずは不良部分を改善し, チャートをある程度の質に向上させてから,より優れたチャートはどういったものかを議論していく方が好ましいと考えるからである.

図 1.2.1 レビューによって段階的に不良をなくす

HCPチャートの性質上,不良部分を改善することで,チャートの構造が明確になり,これまで見逃していたような不良が発見できる 場合もある.そういった意味から考えても,まずは最初にチャートの不良を減らしていくという方針から得られる恩恵は大きい.

また,チャートの質を評価するということを考えた場合,チャートの全体量に対する不良部分の割合が低い方が, 質の高いチャートであると考えられる.つまり,チャートの評価を減点法で採点することで,チャートの評価が行いやすくなる. これについては,後の節[レビューによる評価]にて概要を,章[レビューによる評価]にて詳細を述べる.