6.5 Webサイトの企画立案
いよいよWebサイト制作の第1ステップである企画の立案を行いますが,Webサイトを制作するということは,全世界に対して情報を発信するということを意味しています.そこで,はじめに情報発信を行う際の心構えやルールについて説明します.その上で,Webサイト制作の流れについて説明し,その第1ステップである企画の立案について説明します.
情報の発信をする前に
自分のWebページを公開する前に以下の項目について考えてみましょう.
- 不特定多数の人に見られてもいい情報か?(自分の住所,電話番号等)
- 情報を載せることによって不利益をこうむる人はいないだろうか?(他人の誹謗中傷など)
- 画像等の取り扱いにおいて,著作権を侵害していないか
- その他,法律及び公序良俗に反する内容を含んでいないか
常にこれらを頭においた上で,Webサイトの制作を行いましょう.
Webサイト制作の流れ
Webサイトに限らず,コンテンツを制作する際には企画・設計・実装・評価というプロセスを踏むのが一般的です.このプロセスは,皆さんが授業などで書くレポートの作成過程と似ています.以下,レポートの作成過程とWebサイトの制作過程を比較することによって,企画・設計・実装・評価というプロセスについて説明します.
レポートを書く時,普通はいきなり文章を書き始めるのではなく,まず何を書くべきかの構想を考えることから始めるのが一般的です.レポートのテーマと内容について構想を練る過程が,Webサイト制作における企画の過程に相当します.次に,レポートに書くべき内容が決定したところで,内容が読み手に正確に伝わるためにはどのような順序,構造に基づいて文章を展開していく必要があるかについて考えます.具体的には,章立て等を決定する過程であり,これがWebサイト制作における設計の過程に相当します.次に,決められた構造,順序(章立て)に基づいて実際にレポートを書いていきます.これがWebサイト制作における実装過程に相当します.そして,完成したレポートを推敲しますが,これがWebサイトの評価にあたる過程です.
Webサイトの制作では,必要に応じて評価の結果をフィードバックさせます.場合によっては,企画,設計の修正を行い,再度実装,評価の過程を踏みます.以上の過程を繰り返すことによって,Webサイトを洗練していきます.
Web 作成のプロセスとレポート作成のプロセス具体的に,Webサイトを制作する際のプロセスを見てみましょう.Webサイトはネットワークを介して公開され,主に画面上で読むという性質上,印刷物を制作するのとは異なった点があります.
・Webサイト制作の流れ(出典:「学校で教わっていない人のためのインターネット講座」,有賀妙子・吉田智子著,北大路書房,1999,p86)- 企画:どのようなサイトを作るか明確化する(目的の決定,サイトに盛り込むべき内容の取捨選択).また,制作スケジュールを立てる
- 設計:そのページによって伝えたい内容を読み手に正確に伝えるために,どのようにページまたはページ間の関連を構造化していくかを考える.具体的には,全ページの構成,関連を明らかにし,個々のページのレイアウト,構成要素を決定する
- ページ作成:画像などを用意し,HTMLを記述することによってページを作成していく
- テスト:表示やリンクなどが設計通りに機能するかチェックする
- 評価:サイトの内容,伝わりやすさ,操作性などについて他者を交えた評価を行う(批判的閲覧)
- 修正:評価に基づいて,修正を行う
- 公開:制作したWebサイトをWebサーバに置き,公開する(CNSではpublic_htmlの下に置く)
- 保守:内容の更新,リンクのチェックなど,情報の鮮度を保持する
今週は,制作プロセスの第一歩である企画の立案について解説します.
企画の立案
インターネット上には無数のWebサイトが存在しますが,品質に関してはばらつきがあり,必ずしも有益なサイトばかりではありません.ページが表示されるまでに30秒もかかったり,内容の信頼性が低かったり,全くの自己満足のために作られていたりと,読み手に読む気をおこさせないサイトも少なくないのです.
どのようなWebサイトを制作するかは制作者の自由ですし,自己満足のためのサイトを制作することもそれはそれで楽しいものですが,大学の授業である本科目では,何かしら他人に益を与えることのできるWebサイト,他人の閲覧にたえうるWebサイトを制作することを目標とします(ただし,難しい技術を使って派手なWebサイトを作ることが本科目の目的ではありません.ここで言う他人の閲覧にたえうるサイトとは,情報が構造化されており読みやすく,かつ表示が環境に依存しないサイトのことです.また,どのようなWebサイトを作るかは皆さんの自由ですが,皆さんの伝えたい情報を提供する「情報提供型」サイトを制作することをお勧めします).
他人が読んでくれるWebサイトを制作するためには,サイトのコンセプトを考えWebサイトの目的を決定しなければなりません.同時に,対象者,サイトに盛り込むべき内容(一番伝えたいことは何か),制作完了までのスケジュールなどについて決定します.参考として,企画の例を1つ示します.
テーマ | 料理のレシピ |
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ページの目的 | 一人暮らしの学生が簡単に作れる安価でヘルシーな料理のレシピを多数提供することによって,学生の健康的な食生活を支援する |
対象者 | 主に,一人暮らしをしている学生を対象とする. |
一番伝えたいこと | 簡単で安価,かつ美味しくヘルシーな料理の作り方 |
ページタイトル | 美味しいレシピ |
主な表現手段 | 文章と画像 |
公開までのスケジュール | 6月前半にレシピの調査を行い,6月後半から7月前半にかけて設計,実装を行う.その後,テスト,評価を行い,7月中旬に公開予定. |
その他 | レシピの人気投票を行うことも考えている. |
企画は,後で修正・変更することが可能です.一度企画を行ったらその通りに制作しなければならないというわけではありません.
● 宿題
制作するWebサイトの企画案を考え,企画書として次週提出してください.企画書は次週Webページ化します.項目としては,Webサイトの目的,対象者,サイトに盛り込む内容,制作完了までのスケジュールを含んでください.画像などを用意して頂いても構いません.なお,制作したWebページは全世界に公開されます.法律を侵す内容(特に,著作権等),公序良俗に反する内容,その他公開が適切でないと考えられる内容を含むページを企画しないようにして下さい.