4.2 コンピュータの構成要素とその働き

ハードウェアとは

みなさんが,特別教室で目にするコンピュータは様々な部品から構成されています.最初にそれらの部品がどのような外観をしていて,どのような機能を持っているかを見ていくことにしましょう.これから紹介するようなコンピュータを構成する機器の事をハードウェアと呼びます.コンピュータを物理的に構成しているのはハードウェアですが,ハードウェアだけではコンピュータは仕事をする事はできません.コンピュータが仕事をする上で欠かせないソフトウェアについては,4.3 ソフトウェアとコンピュータの特徴で詳しく解説することにします.

コンピュータの構成要素

コンピュータの内部を覗いてみると以下のようになっています.

コンピュータ内部の写真1コンピュータ内部の写真2

コンピュータの中には演算をつかさどるCPUと,記憶をつかさどるメモリ,ハードディスクがあります.これらの要素が相互に協調しあってコンピュータの機能を実現しています.各構成要素について少し詳しく見てみましょう.

記憶装置

コンピュータの記憶装置には,主記憶装置(メモリ)二次記憶装置(補助記憶装置,ハードディスクやCD-ROMなど)があります.両者の特徴は以下の通りです.

主記憶装置
  • データの読み込み速度・書き込み速度が速い
  • 電源を切るとデータが全て消えてしまう
二次記憶装置(補助記憶装置)
  • データの読み込み速度・書き込み速度が(主記憶装置と比べて)遅い
  • 電源が切れてもデータは消えない

テキストエディタを使った文書編集を例に,記憶装置の役割について見てみましょう.emacsを使って文章を編集するとします.

保存前  保存前

このように「文章を書きます。」という文章を入力しました.この段階では,入力された情報(文章)は主記憶装置であるメモリに保存されています.これは,編集中の文章は変更される可能性が高く,情報を高速に読み書きできる必要があるためです.

保存後  保存後

しかし,メモリ上に保存された文章情報はコンピュータの電源が切られると消失してしまいます.そのため,書き終えた文章はファイルに保存します.ファイルに保存するとは,メモリ上に存在している文章情報を二次記憶装置にコピーすることです.これによって,コンピュータの電源が切れても文章が消失してしまうことはありません.

● 練習問題

  1. (二次記憶装置である)ハードディスクと(主記憶装置である)メモリの利点と欠点をそれぞれ1つずつあげてみよう.

主記憶装置の外観

主記憶装置はコンピュータ内部にあり,通常メモリと呼ばれます.メモリは,以下のようなスティック状の形をしています.

メモリ表面写真メモリ裏面写真

メモリ横面写真

二次記憶装置(補助記憶装置)の外観

二次記憶装置には以下のようなものがあります.ハードディスク以外はすべてコンピュータ外部の記憶装置です.

  • ハードディスク
  • フロッピーディスク
  • CD-ROM / CD-R / CD-RW
  • DVD

ここでは二次記憶装置の例としてハードディスクを紹介します.ハードディスクはコンピュータ内部にあり,その概観は以下のような四角い箱となっています.

ハードディスク表面写真ハードディスク裏面写真

ハードディスク上部にある銀色の板をはがして,ハードディスクの中身を見てみましょう.

ハードディスク内部写真

中には鏡のような円盤が2枚入っています.(写真の例は分解の過程で上側の円盤1枚が割れてしまったものになっています)
この円盤の上に磁気を載せる事で,情報が保存されます.電源が入っているときには,この円盤は回転しています.

銀色の三角形の形をした突起がヘッドと言われる部位で,これが上下に移動することで情報の読み書きが行われます.

記憶装置の容量

主記憶装置も二次記憶装置も情報を記憶するための容量を持ちます.情報の量を表す単位としてはビットやバイトという単位が使われます(情報量の目安として,コンピュータ上で漢字一文字が持つ情報量は,一般的に2バイトです.また,画像データや音声データなどは文字と比較するとより大きな情報量を持ちます.詳しくは,10.4 情報量を参照して下さい).現在市販されているメモリは,一本で64メガバイト,128メガバイト,256メガバイト,512メガバイトのいずれかのデータ容量を持つメモリが一般的です.また,二次記憶装置は主記憶装置と比較して記憶容量が格段に大きく,例えばハードディスクは現在では数十ギガバイトの容量を持ちます(ギガはメガの1000倍を意味します).

CPU

CPU(Central Processing Unit)は演算機能を持ち,コンピュータの頭脳に相当します.まずはCPUの外観を見てみましょう.

CPU表面写真CPU裏面写真

CPUななめからの写真

CPUは,主記憶装置上のプログラム(コンピュータに実行させたい仕事の手順を記述したもの,詳しくは4.3 ソフトウェアとコンピュータの特徴で解説します)から一つ一つ命令を読み出して実行する装置です.CPUは,演算ユニット(Arithmetic and Logic Unit)とレジスタという部品から構成されています.レジスタは,CPU内部で情報を保存するユニットです.演算ユニットは,レジスタの情報を使って計算(四則演算や論理演算)を行います.

CPUは基本的に以下の三つの仕事しかしていません.

  • メモリやその他の部品から,レジスタにデータを転送する
  • レジスタに記憶されているデータに対して演算を行う
  • レジスタからメモリやその他の部品にデータを転送する

コンピュータはこれらの単純な動作の積み重ねによって,様々な機能を実現しているのです.

クロック

クロックとは,CPUの各部分の基本動作のタイミングを合わせるために,一定の時間間隔で発生させられるパルス信号です.クロック信号が発生する間隔が短ければ短いほど,CPUの各部分の動作は速くなります.クロックが1秒間に何回発生するかを示す数値としてクロック周波数が使われます.一般にその周波数が高ければCPUの動作速度も速いということができます.

コンピュータの販売広告などで「1GHzのCPU」と言った歌い文句を聞いた事はないでしょうか?この1ギガヘルツとは,クロック数を示しています.1ギガヘルツの場合,1秒間に1ギガ(1,000,000,000)回ものクロック数の処理を実行する事ができます.この数が増えれば増えるほど,CPUの処理速度が高速であると考える事ができます.Pentium IIIというCPUでは,一回の加算,除算にかかる時間は1クロックです.仮に,クロック数が1ギガヘルツである場合,このCPUは1秒間に10億回の加算を実行することができます.