7.3 制作プロセスと企画
情報の発信
情報の発信とは,あるものの現状を理解し把握するためのデータを他者に伝える行為と考えることができます.その行為は,他者に自分の存在を知ってもらうこと,または自分の知っている情報を他の人を幸せにするために提供することを目的とします.この章では情報の発信をコンピュータネットワークを使って行う方法について学びます.
WEBページを批判的に閲覧するための評価基準は,WEBページを制作する際の指針となります.では,WEBページは実際にどのような流れに基づいて制作されるのでしょうか.ここでは,今後WEBページを制作していく際の手順について解説します.また,WEBページ制作の第一歩であり重要な過程である「企画」について解説を行い,次週までに皆さんが制作するWEBページの企画を行ってもらいます(次週企画を企画書としてWEBページ化します).
情報の発信をする前に
情報を発信する前,自分のWebページを公開する前に以下の項目について考えてみましょう.
- 不特定多数の人に見られてもいい情報か?(自分の住所,電話番号等)
- 情報を載せることによって不利益をこうむる人はいないだろうか?(他人の 非難中傷)
- この情報に関して自分で責任は取れるのだろうか?
常にこれらを頭においた上で,自分が伝えたい情報を正確に他者に伝えられるような力を身につけましょう.
WEBページ制作の流れ
WEBページに限らず,コンテンツを制作する際には「企画・設計・実装・評価」というプロセスを踏むのが一般的です.このプロセスは,皆さんが授業などで書くレポートの作成過程と似ています.レポートを書く時,普通はいきなり文章を書き始めるのではなく,まず何を書くべきかの構想を考えることから始めるのが一般的でしょう(よほど切羽詰っている時は別かもしれませんが・・).レポートのテーマと内容について構想を練る過程が,企画の過程です.次に,レポートに書くべき内容が決定したところで,内容が読み手に正確に伝わるためにはどのような順序,構造に基づいて文章を展開していく必要があるかについて考えます.具体的には,章立て等を決定する過程ですが,これが設計の過程であると言えます.次に,決められた構造,順序(章立て)に基づいて実際に文章を書いていきます.これがコンピュータサイエンスの言葉で実装と言われる過程です.そして,書き終わったレポートを推敲しますが,これが評価にあたる過程です.最後に完成したレポートを提出します(WEBページでは公開にあたります).
レポート作成のプロセス具体的に,WEBページを制作する際の流れを見てみましょう.WEBページはネットワークを介して公開され,主に画面上で読むという性質上,印刷物を制作するのとは異なった点があります.
・WEB制作の流れ- 企画:どのようなページを作るか明確化する(目的の決定,ページに盛り込むべき内容の取捨選択).また,制作スケジュールを 立てる.
- 設計:そのページによって伝えたい内容を読み手に正確に伝えるために,どのようにページまたはページ間の関連を構造化してい くかを考える.具体的には,全ページの構成,関連を明らかにし,個々のページのレイアウト,構成要素を決定する.
- ページ作成:画像などを用意し,HTMLでページを作成していく.
- テスト:表示やリンクなどが設計通りに機能するかチェックする.
- 評価:ページの内容,伝わりやすさ,操作性などについて他者を交えた評価を行う(批判的閲覧).
- 修正:評価に基づいて,修正を行う.
- 公開:制作したページをWEBサーバに置き,公開する(CNSではpublic_htmlの下に置く).
- 保守:内容の更新,リンクのチェックなど,情報の鮮度を保持する.
第7週では,制作プロセスの第一歩である企画について解説します.
企画について
インターネット上には無数のWEBページが存在しますが,品質に関してはばらつきがあり,必ずしも有益なページばかりではありません.ページが表示されるまでに30秒もかかったり,内容の信頼性が低かったり,全くの自己満足のために作られていたりと,「あまり見る気をおこさせない」ページも少なくないのです.
どのようなページを作るかは制作者の自由ですし,自己満足のためのページを作ることもそれはそれで楽しいものですが,大学の授業である本科目では「何かしら他人に益を与えることのできる」ページ,「他人が見に来てくれる」ページを制作することを目標とします(ただし,難しい技術を使って派手なページを作ることが授業の目的ではありません.HTMLのごく基本的な技術を使って,内容で勝負することをお勧めします.また,どのようなページを作るかは皆さんの自由ですが,一つの指針として皆さんの伝えたい情報を提供するページを制作することをお勧めします).他人が見てくれるページを作るためには,ページのウリ(セールスポイント)を考えなければなりません.すなわち,ページの目的決定ですが,これが企画の柱です.同時に,対象者,ページに盛り込むべき内容(一番伝えたいことは何か),制作完了までのスケジュールなどについて決定します.参考として,企画の例を1つ示します.
WEBページの企画例企画は,後で修正・変更することが可能です.一度企画を行ったらその通りに制作しなければならないというわけではありません.