社会シミュレーションのためのモデル作成環境

概要

本論文では，社会シミュレーションのためのモデルを，ソースコードではなく図解によって記述する モデル作成環境を提案する． 現在，マルチエージェント・シミュレーションの多くは，最終的にC言語やJava言語などのプログラミング言語による 実装を行うことで実現されている． そのため，プログラミング言語の知識がないとモデルが作成できないという問題がある． また，モデル作成者が，本質的なモデリングの作業よりも，ソースコードを記述する作業に 目を奪われがちになってしまう． これらを解決するため，本論文では，シミュレーションのためのモデル作成を ソースコードではなく図解によって行い，図解からソースコードを自動生成する方法を提案する．

図解によるモデルの作成を可能にするため， 本論文では，その支援環境である「Component Builder」(CB)を提案する． 提案するモデル作成環境は，モデルを記述するための記法として， UMLと，独自に定義したアクション記述言語である「Action Block Language」(ABL)を採用する． CBはこれらを用いて図に記述されたモデルを，実行可能なプログラムのソースコードに 自動で変換する機能を提供する． モデル作成者は，CBを利用することでソースコードを記述せずにモデルを作成することができる． また，ソースコードよりも抽象度の高い図解でモデルを作成することで， 社会シミュレーションの対象をモデル化する作業に集中することができる．

本論文では，提案するモデル作成環境の有効性を明らかにするため，提案する環境を用いて既存モデルの再現を行った． 再現するモデルとしては，「繰り返し囚人のジレンマ」モデルを取りあげた． さらに，9名の被験者を対象として，提案するモデル作成環境を利用し，小規模なモデルを作成する試用実験を行った． これら二つの面から評価を行った結果，本論文が提案するモデル作成環境の有効性が実証された．

キーワード：1.シミュレーション, 2.オブジェクト指向, 3.UML, 4.アクション, 5.MDA

Abstract

This thesis presents modeling tools for social simulation. Current existing tools for multi-agent simulation only support modelers to make simulation models with coding. Therefore, we have to take care of the implementation with program codes in addition to modeling a target world of simulation. To solve the problem, we propose a new paradigm and development tools which translate simulation models from diagrams to program codes.

We propose "Component Builder"(CB), which consists of several tools to develop simulation models by drawing diagrams. These tools provide functions to design a model with diagrams in UML and "Action Block Language"(ABL). ABL is modeling language for describing actions in a simulation model. With the proposed tools, modelers can develop a simulation model without coding. Thus, they can concentrate on essence of a simulation model.

We experimented the performance of the proposed tools. We applied the tools to an existing model which is the model of iterated prisoner's dilemma. We also made modelers who have few programming skills to use the tools. As a result, the performance of the proposed tools is justified.

Keywords: 1.Simulation, 2.Object-Oriented, 3.UML, 4.Action, 5.MDA