研究プロジェクトB(1)

"情報教育プロデュース"研究会
担当者: 大岩 元
形態:B型(テーマ別研究プロジェクト)・週1回2単位

背景と概要


「情報教育」という言葉を聞いた時に、皆さんはどんなイメージを持ちますか


「情報教育」とは、コンピュータの使い方を教育することでしょうか?たしかにコンピュータの使い方を教育することは重要です。しかし、それだけでは「操作教育」です。「操作教育」が「情報教育」の全てではありません。

「情報教育」は楽しいものでしょうか?教育とは本来「楽しいもの」のはずです。しかし、「プログラミング」と聞くと急に苦手意識を持つ人も多いでしょう。

例えば、"特定のアプリケーションソフトの使用法を学ぶだけの授業"、"意味もわからないまま構文を覚えるだけのプログラミングの授業"を受けたことがある人も多いと思います。こうした「情報教育」もどきが(SFCでも)横行してしまっていることが、「情報教育」=「操作教育」=「つまらない」という勘違いを生む一つの原因だといえるでしょう。

では「情報教育」とは一体何なのでしょうか?”自分なりの答え”を研究会の履修者みんなで真剣に探していきましょう。

この研究会では、「自分なりの答え探し」の過程で、理論を学ぶ事と実践を行う事を同時に行います。理論というのは「情報教育」の全体像を支える考え方です。実践はその理論に基づいて作られた実際の授業です。理論だけを持ち出して議論や評価を行うことは難しく、曖昧な結論に終わりがちです。研究会の場を利用し、授業という具体的な実践を元に議論を行う事で、「情報教育」の本質を発見していく事ができるでしょう。

情報化社会の中では、優れた「情報教育」を提供する優秀なプロデューサーが必要不可欠になります。
履修者の皆さんが優秀な”「情報教育」プロデューサー”になることが、この研究会の目標です。



皆さんは未来の"「情報教育」プロデューサー"なのです


プロデューサーとは

 


履修者の目標である、”優秀な「情報教育」プロデューサー”は以下のような人だと考えられます。
  • 「情報教育」に対する明確なビジョンがあって、自分の価値観を持っている人
    • (研究会で)実際のプロデュース作業や議論を行いながら次第に養っていく
  • 「情報教育」プロデュースの作業が実際に行える人
    ※ 各段階(企画・設計・実践・評価)を確実に行う能力がある人
    • (研究会で)実際のプロデュース作業を体験して、能力を磨いていく

これらの2つの柱は、お互いが密接に結びついて成立しています。それぞれが両立してこそ、本当に「優秀な」プロデューサーといえるでしょう。

 

 


ですから、プロデューサーと言っても、椅子に座って偉そうなことを言っているだけでは勤まりません。実際に「情報教育」を1から作るためには様々な役割を務めなければいけません。

「情報教育」を企画する →プランナー
「情報教育」を設計する →デザイナー
「情報教育」を実践する →インストラクター
「情報教育」を評価する →アナライザー

プロデューサーはこうした役割を全てこなさなければいけません。大変な作業ですが、学期の終わりにはあなたがプロデューサーとして作り上げたオリジナルの「情報教育」が完成します。

プロデュースが順調に進めば、研究会の枠を飛び出し、SFCで授業として開講したり、学外の講習として開催したり、あなたが作った「情報教育」をより多くの人に提供する事も夢ではありません。


研究会の内容

 


履修者の皆さんは「情報教育」に関する題材を自由に選んで、その題材に関する具体的な「情報教育」をプロデュースしていきます。何を題材に選ぶかという事を考える時点で「情報教育」とは何なのかを考えることが始まっています。ですからテーマの選定はプロデューサーである履修者の方にお任せします。

先学期の題材例:
■高齢者向けパソコン教室を開こう
■Mind Stormsでプログラミングを教えよう
■デジタルデザイナーを育てよう
■SFCの情報教育を改善しよう

過去の題材や成果などの詳しい情報については、先学期の研究会のホームページもご覧ください。
https://crew-lab.sfc.keio.ac.jp/seminar/2002fall1/index.html

題材が決定したら、全体のカリキュラムを設計します。研究会の時間を利用してレビューと議論を行います。

それが終わったら具体的な授業の設計を行い、教材やテスト、授業のマニュアルなどを用意します。そして実際に研究会で授業を行ってみます。この段階になれば、研究会の授業時間で先生と呼ばれるのはプロデューサーである履修者の皆さんです。他の履修者にパイロットテストとして授業を受けてもらい、評価してもらいましょう。

そして、その評価を元にこれまでプロデュースしてきた「情報教育」を改善します。この一連の過程を繰り返すことで、"たまご"だったプロデューサーは、次第に"一人前"のプロデューサーに成長を遂げていくというわけです。


履修者の人数と題材にもよりますが、数名のグループを組み、プロジェクト形式で作業を行ってもらう予定です。


履修で身につく能力



この研究会でプロデューサーとして活動するには、様々な能力が必要になってきます。
「プロデューサーとは」の項でも述べたように、優秀なプロデューサーが持つべき能力は、幅広いものです。とくに「情報教育」という分野にとらわれず、一般的にも有用な能力のうち、この研究会を履修する事で習得できると思われる能力を以下にまとめてみました。

■みんなを魅了する企画を考える能力(プランナーの素質)
■合理的で美しい設計をする能力(デザイナーの素質)
■楽しいプレゼンテーションをする能力(インストラクターの素質)
■他者の評価を的確に分析し、改善をする能力(アナライザーの
素質)

履修前からこれらの能力を前提として求めているというわけではなく、これらは一人前のプロデューサーとして成長した履修後に、得られると思われる能力です。

これらの能力を伸ばす近道は実際にそれぞれの作業を経験することです。上にあげた能力のうちに座学だけで得られる能力は1つもないでしょう。

研究会でプロデューサーとなって、こうした作業を何回も経験する事でこれらの能力は実践力を伴って身に付けることができると思います。


授業形式

 

決まった形式はありません。各プロジェクトの作業段階によって動的に変化します。

例えば、

■あるときは、企画会議
■あるときは、設計会議
■あるときは、インストラクションの会場
■あるときは、反省会議  

として研究会の授業時間を利用します。

授業スケジュール



スケジュールも各プロジェクトの作業段階によって動的に変化しますが、基本は以下のような流れになります。

前半:「情報教育」の企画と設計を行う
■中盤と後半:授業(パイロットテスト)を行いながら、改善していく


評価方法




レビューや議論への貢献度と積極性
■プロデュースした「情報教育」の完成度

を総合的に評価します。


履修の条件

 

ありません。やる気がある学生を望みます。

受け入れ予定人数

 

とくに制限はありません(希望者が30人を超える場合は、面接を行う場合があります)

関連プロジェクト

大岩研究室ではプロジェクトとして以下のようなものがあります。
プロジェクトによっては現在も進行中のものもありますので、研究会で養った能力を生かして是非参加してください。

サマースクール:
夏休みを利用して小学生にパソコンの操作を楽しみながら教えます.大岩教授の顔に落書きをしながらマウスの操作を覚えたり,しりとりをしながらキーボードのタッチタイピングの練習をしたり,楽しみながら覚えて,パソコンを好きになってもらうことができました.

新人研修カリキュラム開発プロジェクト:
ソフトウエア開発会社であるエクサの新人研修において,オブジェクト指向プログラミングを教えるカリキュラムを開発しています.同社には優秀なプログラマがいるものの,初心者に対してどのように教えるかについては彼らは素人なのです.まさに,教える内容の専門家が教える方法で困っているのです.これらの問題を解決するため,インストラクショナルデザインを活用して教育をプロデュースしています.

enTrance :
今の大学の教育環境システムに不満はありませんか?講義が期待していた内容と違ってがっかりしたことはありませんか?enTranceでは,大学の教育環境を改善するためのシステムを提案,構築しています.詳しく知りたい人は,是非ホームページを見てください.

御所見パソコン教室プロジェクト :
SFCの近くの御所見中学校において,主に年配者を対象としたパソコン教室を行いました.パソコンへの入力のマスターを軸にし,ソリティアと言うゲームを使いながらマウス操作に慣れてもらったり,タイピングの練習をしたりしました.入力に慣れてからは各自オリジナルの名刺やはがきを作成して楽しんでもらいました.

情報処理教育プロジェクト:
SFCにおける情報処理教育(情報処理,プログラミング)をよりよいものにしていくために,授業カリキュラムや教材開発を行っています.実際にSFCの授業を作り変えていきませんか?興味のある方は,川村(t99290mk@sfc.keio.ac.jp)までご連絡ください.


連絡先


質問などありましたら、杉浦 学(crew-info@sfc.keio.ac.jp)までお願い致します。

なお、履修予定の方はメールにてその旨をお伝えいただけると、幸いです。

大岩研究室i308にも遊びに来てください。

研究室ホームページ



様々な情報がここから閲覧できます。

http://crew-lab.sfc.keio.ac.jp