慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス
授業概要(シラバス)
2001年度 秋学期 |
科目名:オブジェクト指向モデリング |
科目コード 47070 |
担当者氏名:児玉公信 |
主題と目標
概念レベルのモデリングは,ビジネス要求の本質を理解して,それを当事者間で共有する活動です。効果的な情報システムの構築には,こうした理解の共有が必須です。また,情報システムは長期にわたって変更されながら成長していくものですが,それは他のシステム要素への影響を最小に留めながら行われなければなりません。良いモデルは,ビジネス構造やビジネスルールを的確に記述することによって,それを可能にします。
本科目では,オブジェクト指向モデリングの事実上の世界標準言語であるUML(Unified Modeling Language)を取り上げ,前半ではこの中から要求記述,対象領域の概念構造の記述,ビジネスルールの記述,業務フローの記述およびオブジェクトどうしの対話の記述などの記法について解説し,後半ではいくつかの事例を取り上げて実際にモデリングを行い,モデリングプロセスを体験しつつ,良いモデルを追及します。
教材
オブジェクト指向とコンポーネントによるソフトウエア工学――UMLを使って――
Stevens, P. 著, 児玉公信 監訳,ピアソンエデュケーション,ISBN4-89471-263-6
授業計画
第1回[10月2日]
モデルとは何か。モデルの意味,特にメンタルモデル,モデリングの視点について説明して,本講義のオリエンテーションとします。
第2回[10月9日]
良い情報システムとは何か。失敗の事例を取り上げてその原因を検討します。低い結合度,高い凝集性がオブジェクト指向においても良い構造であることを説明します。
第3回[10月16日]
オブジェクト指向の概念を整理したあと,UML(Unified Modeling Language)を導入します。
第4回[10月23日]
図書館システムの例を使って,ユースケースとクラス図(型図)シーケンス図,状態図について触れます。
第5回[11月6日]
静的モデル1。概念を集合としてとらえること,概念間の関係も同様にとらえられることを示します。概念を「型」として記述すること,多重度とその記法を示します。モデルとしてどのような概念を取り上げるかについて考察します。
第6回[11月13日]
静的モデル2。関連の意味,関連型とロールの意味を説明します。弱い型,導出型について述べます。型モデルをインスタンス図(オブジェクト図)を書くことで理解する方法を示します。
第7回[11月27日]
静的モデル3。型が自然な正規形になっていることを確認します。サブタイプ,知識レベル,抽象型について述べます。
第8回[12月4日]
動的モデル1。要求記述としてのビジネスレベルのユースケースを導入します。シナリオの考え方,システム境界について説明します。
第9回[12月11日]
動的モデル2。コラボレーション図,シーケンス図,状態図,アクティビティ図を導入します。ワークフローの考え方についても述べます。
第10回[12月18日]
モデルの理解。アナリシスパターンおよび事例のモデル図を見て理解を試みます。
第11回[1月8日]
モデリング1。教科書の事例CS4を使って,モデル図を書いてみます。良いモデルの基準を与えて評価します。
第12回[1月15日]
モデリング2。簡単な問題を取り上げて,ユースケース記述を行い,これを基にモデル図を書いてみます。
試験・成績評価の方法
次のテーマでレポートを提出してください。1月28日(月)締め切り厳守。形式はハードコピーとします。提出先は,事務室窓口とします。
自分でモデリングの対象とする人間活動システムを選び,@その基本定義(root definition)を行い,Aそこから導かれる基本課題を満足するユースケースを1件以上記述し,Bそれらを満足する概念レベルのドメインモデルをUMLで書き,Cそのモデルを自己評価してください。これ以外に,説明を補うためのアクティビティ図やシーケンス図を書いていただくと,理解がしやすくなって助かります。