コミュニケーションとは,ある人が自分の考えや気持ちを他の人に伝えることであると言えます. 日常生活においても,私たちは様々な目的のためにコミュニケーションを行っています.例えば,友 達に課題についての情報を伝えることもコミュニケーションの1つですし,遠く離れた場所にいる友 達に手紙を送ることもコミュニケーションの1つです.コミュニケーションは様々な手段によって行 われます.ある人が自分の考えを他の人に伝えたいと思ったとき,相手がすぐ近くにいれば会話をす ることによって自分の考えを伝えることができます.また,仮に相手が遠く離れた場所にいたとして も,電話や手紙,電子メール等の手段を利用してコミュニケーションを行うことができます.どのよ うな手段によって行われるにせよ,コミュニケーションが成立するためには一定の手順や決まりごと が必要となります.例として,私たちが日常的に行っている会話がどのようにして成り立っているの かについて見てみましょう.会話は以下のような手順で行われます.A君がB君に自分の考えを伝え ようとした時,まずA君の頭の中には伝えたい考えがまとまっていなければなりません.次に,A君 は頭の中にある伝えたいことを言葉としてB君に発します.この時,その言葉は会話を行う両者双方 にとって理解可能でなければなりません.さらに,A君が発した言葉は音声として空気を振動させ, B君へと伝わります.以上の流れを表したのが,図1です.このように見ると,会話が一定の手順, 決まりごとの上に成立していることがわかります.会話を成立させる手順とは,具体的には伝えたい 考えを頭の中でまとめ,それを言葉として発し,言葉が音声として相手に伝わるという流れを指して います.また,決まりごととは,会話で用いられる言葉が会話を行う双方に理解可能でなければなら ないことや,言葉を音声を用いて伝達することなどです.コミュニケーションを成立させるこのよう な手順,決まりごとのことをプロトコルといいます.私たちが行うコミュニケーションは,様々なプ ロトコルに基づいて成立しており,コミュニケーションを行う双方が同じプロトコルに従う必要があ ります.どのようなプロトコルが用いられるかは,コミュニケーションの手段によって異なります. 例として,電話を利用したコミュニケーションと会話によるコミュニケーションを比べ,電話による コミュニケーションではどのようなプロトコルが使われているかについてみてみましょう.電話を利 用したコミュニケーションも,いくつかのプロトコルに基づいて成立しています.会話と同様に,ま ず意思のプロトコル(伝えたい考えを頭の中でまとめる手順),言葉のプロトコル(双方に理解可能 な言葉を発する手順),音声のプロトコル(言葉を音声として伝える手順)が必要となります.しか し,遠くにいる人に音声を伝えなければならない電話では,更に電話機のプロトコル(音声を適切な 電圧に変換する手順,変換する際の決まりごと),電話交換機のプロトコル(お互いの間を回線で結 ぶ手順)などが必要となります.このように,コミュニケーションの形態に応じて,各種の通信技術 とそれに関連するプロトコルが必要となります.近くにいる人と会話によってコミュニケーションを 行う場合にはさしたる技術は必要とされず,プロトコルも少なくてすみます.しかし,コミュニケー ションの形態によっては,例えば電話のようにその他の技術やプロトコルが必要となってきます.プ ロトコルは階層構造を持ちます.電話を利用したコミュニケーションでは,最も上位のプロトコルは ,考えをまとめたり相手の考えを理解するための意思のプロトコルです.また,下位には,音声を電 圧の変化に変換するためのプロトコルや通信経路に関するプロトコルがあります.コミュニケーショ ンは,ある層までのプロトコルがコミュニケーションを行う双方の間で一致していれば,それより下 位のプロトコルが別のプロトコルに置き換わっても成立するという性質を持っています(図3).例 えば,頭の中にある考えを言葉にするまでのプロトコルが双方の間で一致していれば,郵便システム を利用しようと電子メールを利用しようとコミュニケーションは成立します.コミュニケーションの 仕組みについて,私たちが日常行っているコミュニケーション(会話や電話)を例に学んできました. 次に,インターネットを利用したコミュニケーションについてみてみましょう.コンピュータによる コミュニケーションも,複数のプロトコルに基づいて成立しています.コンピュータ同士は, 「TCP/IP」と呼ばれるプロトコルに従って通信を行います.

会話によるコミュニケーション
電話によるコミュニケーション
プロトコルの階層構造