目次

 

 

1. はじめに... 3

2. 目的... 5

3. 実施体制... 8

3.1. 実施体制概要... 8

3.2. 対象高校の環境... 10

3.3. TAの支援体制... 12

3.4. 「情報演習」授業の内容... 14

3.5. 活動の記録... 17

4. 学生によるレポート... 23

4.1. A(環境情報学部4年、男)によるレポート... 23

4.2. B(環境情報学部4年、男)によるレポート... 27

4.3. C(環境情報学部4年、男)によるレポート... 30

4.4. D(環境情報学部3年、女)によるレポート... 32

4.5. E(環境情報学部2年、女)によるレポート... 35

4.6. F(大学院修士課程1年、男)によるレポート... 36

4.7. G(大学院修士課程1年、男)によるレポート... 39

4.8. H(環境情報学部3年、女)によるレポート... 43

5. 調査結果... 45

5.1. 生徒に対するアンケート調査の結果... 45

5.2. TAに対するアンケート結果... 65

5.3. 教員へのヒアリング調査の結果... 85

6. 評価と考察... 90

6.1. TAは、授業進行の手助けになったか... 90

6.2. 「生徒の支援」の役割をきちんと果たせたか... 92

6.3. TAはどこまで貢献すべきか... 95

6.4. TAはどう実施するのが良いのか... 98

7. 今後の展開に向けて... 101

7.1. 今後TAをする上での検討課題... 101

7.2. TA制度の実施とその課題について、TAの視点から... 105

7.3. 今後のTA活動の実施形態について... 110

8. おわりに... 114

 

1.はじめに

 情報技術(IT)の普及にともなって、近代国家においては情報教育を行なう必要性が高まっている。日本でも遅蒔きながら、2002年から小学校では「総合的な学習の時間」の中で扱い、中学校ではこの他に「技術・家庭」の一部として「情報基礎」が教えられることになった。さらに2003年からは高校に新教科「情報」が設置され、情報教育が本格的に始まろうとしている。

 しかし、日本では情報技術の利用には大金を投じてきたが、情報技術の専門家の育成には不熱心であった。この結果、大学で始まった情報教育も、情報技術の専門知識を持たない利用者が自分のコンピュータ利用経験を学生に伝えるという内容のものが大部分である。

 こうした中で、慶応大学湘南藤沢キャンパス(SFC)では1990年の開学以来、情報技術の専門家が情報教育を行ない、キャンパスの全ての学生がインターネット環境を前提とした学生生活を送るようになっている。専門技術の運用経験しかない教師が、専門家を目指さない一般学生に教えることには問題もあるが、一定の成果をあげていることはまちがいない。

 インターネットが現代社会における情報伝達の手段として一般化した今、SFCで行っている情報教育は初等・中等教育の中で行なわれなければならない時代となった。上記の国の対応は、その現われである。

 SFCにおける情報教育の大きな特色は、授業を支援するTeaching Assistant(TA)の存在と、学生のトラブルシューティングを支援し、その活動を通じて得た知識を生かしてガイドブックにまとめている学生コンサルタントの存在にある。実際、彼らの活躍がなければ、SFCにおける情報教育は全く成り立たない。

 2002/3年から始まる初等・中等教育における情報教育においても、大学教育と似た状況が生じようとしている。教科「情報」が設けられたが、それを教える専門の教員はおらず、そのための教育課程も設けられていない。2000年より毎年3000人ずつ、夏休みに数学、理科、工業、商業の教員に15日間の講習を行って教科「情報」の免許を発行しようというのが、文部省の政策である。

 このような促成教員による教育は、かって太平洋戦争直後に再び英語教育を行なわなければならなくなった時にも行なわれた。この結果、日本の英語教育は英語の喋れない教員によって行なわれることが常態化し、国際化が進んだ今日、日本人の英語能力の低さが問題となっている。

 情報技術の場合、同じような事が起ころうとしているが、その影響は英語に比べてはるかに大きい。国内で生活している限り、そして大部分の国民は国内で生活するわけであるが、英語がしゃべれなくてもほとんど支障はない。しかし情報技術が日常化する21世紀において、情報技術が使いこなせないことは、文字を読み書き出来ないことと同等の不利益を国民にもたらす。

 従って、情報教育は21世紀の日本の社会が、先進国の地位を保てるかどうかの要の問題となると考えられる。何としても成功させなければならない。

 このためには、考えうるあらゆる手段を用いなければならないが、その一つがTAの導入である。Teaching Assistant(TA)は大学院生による授業支援であり、日本の大学でも日常化してきたが、トラブルの多い情報教育では必須の教育手段と言ってよい。

 しかし、日本の初等・中等教育においては、教育現場は教師の聖域であって、他人の介入を許さないのが常識であった。また、教師は常に学生より能力も知識も高い神様のような存在として教室に君臨してきた。そこに生徒以外の人間が入ってくることに対する教師の抵抗は大きい。

 情報教育においては、基本を教えたら生徒はどんどん先に進んで教師を追い抜いて行く。ことに、情報技術の専門教育を受けていない教師が教える場合、それは極めて短時間のうちに達成される。そこに、自分とは違った能力を持ったTAが入ってくるのもまた、教師にとって経験したことのない状況となる。情報の教師は、全く今までと違った教室運営を行なわなければならなくなるのである。

 今回の試みは、教師が行なっている教室の中に、どんな教育が行なわれようとしているかをほとんど何も知らない大学生がTAとして入って行った時に、何がおこるかを実験したものである。今後、おそらくTAやその他の人々が教室に入って行くことになるであろうが、その時何が起こるかを試してみたものとして、今回の試みは意味があると考える。その詳細は以下の報告に委ねるとして、この体験で最も大きな影響を受けたのは、TAを行った学生ではないかと思う。それもまた、広い見地から見た時の教育効果として意義深いものではなかろうか。

2.目的

 本実証実験プロジェクトでは、「情報技術に詳しい大学(院)生などが現場の情報教育を支援する体制の確立」を目指し、以下のような目的、および期待される成果のもとで活動を実施した。

 情報処理の専門教育を受けていない教師が、情報教育の教材さえ満足にない学校で、様々な機能に興味を示し活発に質問する生徒たちを一人で指導するのは困難である。そこで、大学(院)生などが支援を行い、生徒らの質問にも余裕を持って指導できる体制を作り、最終的には学校が自立できるような支援方法を確立する。同時に、参加する大学(院)生に対しても、情報教育のあり方を現場から学ぶという「教えることは最大の学習」を裏付ける、開かれた学習方法を確立する。

 高等学校では、2003年度から新教科「情報」が導入されることになっており、コンピュータや情報通信ネットワークを利用した実習を積極的に取り入れることが、学習指導要領に提示されている。本論文では、慶應義塾大学が横浜市立戸塚高校のニーズに合わせ、実施可能な支援形態で実験を行い、その支援形態が大学、高校の相互に及ぼす効果、問題点を抽出することを成果目標とした。

具体的には、「授業内におけるTAの効果と問題点」「TAの存在自体の意義と、TA実施に伴う施策的課題」に分け、前者については

教員・生徒双方にとって、TAの存在が授業進行の手助けになったか

TAは、生徒への支援者、という役割をきちんと果たせたか

2点でまとめ、後者については

TAはどこまで貢献すべきか

TAをどう実施するのが良いか(報酬面なども含めて)

を整理した上で、TA自体の有効性まで踏み込んで考察する。

 評価の実施方法は、新教科「情報」を先取りした形で実施されている、横浜市立戸塚高校の「情報演習」(3年次選択科目)において、大学(院)生がTAとして授業に参加し、全日程終了後に教員・TA・生徒のそれぞれのアンケートないしヒアリング結果をもとに、評価を行う。詳細は後述する。

 また、このプロジェクトを通じて、情報教育支援に参加する大学(院)生などは、初学者の抱える問題点を実地に調査し、教育方法を提案したり、現場で求められる教材を開発するなどの実学を行う機会を得る、という効果が期待されている。以上が、本論文で扱う実証実験の目的である。

 

 さてここで、本プロジェクトに慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスの学生が参加し、実際にTAとして授業に携わる意義を考えてみたい。

 湘南藤沢キャンパスは1990年の学部設立以来、「情報処理」を学生の必修科目として、コンピュータリテラシーと情報・統計処理の習得に力を入れてきた。従って、パソコンやワークステーションのシステム、ネットワークなどに精通している学生が多く、その点において、工学系の学部との共通性を持っている。

 但し、湘南藤沢キャンパスは総合政策学部・環境情報学部という、文系(社会科学系)の要素を色濃く持った学部で構成されている。情報社会における社会システムの在り方、社会問題の解決に向けた情報技術の利用・発展法といった、社会と情報化との関わりを追求しているところに、工学系学部とは異なる特徴がある。

 一方、教職の観点で見ると、湘南藤沢キャンパスに在籍している学生は教職課程を履修できないため、学校教育に教員として関わることは基本的に不可能である。このように、湘南藤沢キャンパスは工学系にも教育系にも属さない大学であり、TAを担当する学生11人の参加動機は様々である。

 しかし、学校が社会との関わりを持つことが求められ、その解決の糸口として情報教育と総合学習が位置付けられている中で、社会の発展と情報化の方向性を議論している湘南藤沢キャンパスの学生が、情報教育に何らかの形で携わる意義は大きいものと考える。それは、次のような理由からである。

@湘南藤沢キャンパスの情報処理が、単にソフトウェアやシステムの開発に主眼を置くのではなく、あくまでも社会活動の一助として情報技術を利用しており、情報教育が目指す方向性と合致している

A情報技術にユーザーの観点で接していることで、情報技術を使って何に取り組むか、といった本質的な活用方法を考えており、その経験を生徒に還元できる可能性がある

B技術面での知識も、高いレベルで備えている学生が多数いる

CTAという制度が、すでに大学内で定着しており、その役割を11人の学生が認識できている

D社会的課題に取り組む中で、教育への関心を寄せている学生も多い。

ECのような学生にとって、TA活動を通じて現場の実情を知ることができ、その経験を踏まえた上で議論が展開できるようになる

F情報教育の今後の発展性について、工学や教育学の視点からだけでなく、多方面からの検討を加えることができる

 

 以上の理由から、湘南藤沢キャンパスの学生がTAとして参加することが、有効ではないか、と仮定した。今回の実験結果を踏まえ、必ずしも情報や教育に関する専門性を持たない学生が、情報教育のTAとして参加することの意義および問題点を、併せて洗い出したい。

3.実施体制

3.1.実施体制概要

3.1.1.支援日時

平成11年11月8日〜平成11年11月26日(3週間)

 

3.1.2.支援者

慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスの学生13名(院生3名、学部生10名)が参加した。

l        同大学大岩研究室(CreW Project)から有志を募り、5名が参加した。

l        また、同大学大岩元教授による平成11年後期授業「認知学習論」において、興味のある学生を募り、8名が参加した。

 

3.1.3.支援場所

横浜市立戸塚高校

(〒245-0062 横浜市戸塚区汲沢2-27-1 市営地下鉄 踊場駅下車 10分)

 

3.1.4.支援対象

l        「情報演習」クラス(1クラス約20名)4クラス(月曜3限、水曜6限、木曜5限、金曜3限に設置されている)

l        昼休みにパソコンを自習しにきた生徒

l        「情報演習」と昼休みの間の時間に不定期で情報処理室を利用するクラス

 

3.1.5.支援の活動内容

l        「情報演習」(3年生選択科目)の授業を挟んで、23時間情報処理室に滞在し、TAとして授業のアシスタントを行う。

l        拘束時間は、「情報演習」を含めて授業2コマ分(50分×2)+昼休み とする。 時間は厳守すること。

l        『情報演習』以外の時間に関しては、不定期で情報処理室を利用する授業があるほか、昼休みにも生徒がパソコンを利用しに来るのでそのサポートも行う。

l        いずれの場合も、基本的に生徒がパソコン操作上わからない点を教えてあげたりしながら、適宜生徒とコミュニケーションをとり、生徒にとって身近なヘルパーになることを目指す。

l        その他の活動は担当の先生と相談しながら決める。

l        ボランティアではなく、学生アルバイトとして扱う。時給は800円とする。交通費も支給する。

l        服装は自由だが、大学生として恥ずかしくない服装にすること。

 

3.1.6.支援の評価

3週間のTA支援の後、次の調査方法により評価を行った。

l        「情報演習」生徒に対するアンケート調査

l        支援TAに対するアンケート調査

l        担当先生に対するヒアリング調査


3.2.対象高校の環境

3.2.1.マシン環境

日立製PC40

OS:Windows95

CPU:Pentium  100200MHz

メモリ:16M32M

3.2.2.ネットワーク環境

全てのマシンはYYネット(横浜市情報教育ネットワーク)と接続している。

→市立学校を1.5Mの地域LANで接続し、横浜市情報センターを通じて、infoweb(富士通)経由でインターネットに接続している。

PCを起動し、ログインすると、Windows95の画面より先に、YYネット画面が登場し、生徒はその画面から、Webやメーラーを起動出来るようになっている。

3.2.3.教職員の体制

植草透公 先生 (英語科)

ほか、国語科1名、理科実習教員1名、実習教員1名の4名で担当

 

また、同高校では、TA支援の対象となった「情報演習」の授業において、「ティームティーチング」が行われており、その状況下で支援を行った。

(「ティームティーチング」の体制とねらいについては付録[1]を参照)

3.2.4.「情報演習」科目の授業目的とねらい

(付録[2]を参照)

3.2.5.「情報演習」以外の授業

「情報演習」以外に入る可能性のある授業は、以下のものがあり、その時間にどの授業が入るかは不定期のため、今回のTA支援では、行われた授業に臨機応変に対応してTA支援を行うことにした。

(1)情報処理室を使う科目

英語・日本語表現・物理・保健・社会(政経)

(2)情報処理室を使う科目の内容を「表1 科目毎の内容」に示す。

1 科目毎の内容

 


3.3.TAの支援体制

3.3.1.参加学生

今回、TA支援に参加した13名の学生を以下の「 2 参加学生一覧」に示す。

2 参加学生一覧

3.3.2.参加時間

1日の参加時間は授業2コマ+昼休み(3時間程度)とした。

曜日別の具体的な参加時間を「 3 時間割」に示す。

3 時間割

3.3.3.TAの配置

参加TAの担当曜日ごとに分け、配置した。

具体的な配置を「 4 TA の配置」に示す。

4 TA の配置

3.3.4.TAに対する注意事項

参加するTAには事前に以下のような注意事項を知らせた。

l        TAは授業開始30分前に学校へ集合すること。

l        戸塚高校に到着したら、一度事務室にご挨拶してから情報処理室に向かうので、校門前辺りで待つようにする。

l        戸塚高校の先生方は、多忙なスケジュールで動いておられるので、ご迷惑にならないように、各自で判断できること。(どうやって生徒を助ければ良いか、などは自ら判断すること。但し、判断できないことは適宜先生方をつかまえて、尋ねるようにすること。

l        TAの仕事自体は、積極的に行うこと。必要最小限のアドバイスをするのではなく、生徒とのコミュニケーションをどんどんとっていただいて構わない。

l        もし、空白の時間ができたら、隣の準備室で休憩しても構わない。

 


3.4.「情報演習」授業の内容

3.4.1.「情報演習」の授業日程とTA支援の範囲

「情報演習」科目の授業日程は「 5 授業日程」とし、今回行ったTA支援に該当する項目を斜線で示す。

5 授業日程

3.4.2.具体的な授業の内容

(1)支援第1週(11/811/12)

日立教材(プレゼンテーション情報発信の仕組み)

    

l        日立の教材を用いてプレゼンテーションを行う授業を行った。

l        題材は生徒たちが12月までの完成を目指すホームページの内容であった。

l        この週は短縮授業で授業時間がとても短く、ソフトウエアのトラブルなどもあって、あわただしかったが、生徒たちは自分たちなりに新しいソフトウエアを操作していたようだった。

(2)支援第2週(11/1511/19)

Webページの作成

l        ホームページ作成のために、231組の班でグループ作業を行った。

l        Webページ作成ソフト「Hotall」を使用した。

l        111日の週までに、紙ベースでホームページ作成構想をまとめた段階であった。

l        画像処理ソフトは「PaintShopPro」を使用した。

l        12月最初の週までに、フロッピーベースでホームページを完成させることを目標とした。

(3)支援第3週(11/2211/26)

Webページの作成

l        2週の続きの作業をを行い、完成を目指した。

 


3.5.活動の記録

118日から26日までの計12回分の日誌を記した。

 

11月8日月曜日

担当TA

岩堀、清島、長尾、松澤

 

時間

科目

活動内容

3時限

情報演習

l        「情報の統合的な処理と伝達」授業のサポートをした。

l        授業は日立の試作教材を用いて行われた。

l        日立の方も3人いらしていて、計7人で協力してサポートを行った。

4時限

英語

l        英語でWebページを作る授業

l        「ほたる」の基本的な使い方を教えた。

l        簡単な画像処理(トリミング)を教えた。

昼休み

自習

l        生徒が来ていなかったので、することはなかった。

 

 

 

11月10日水曜日

担当TA

米田、小知和、松澤

 

時間

科目

活動内容

昼休み

自習

l        先生の要請でPC20台に「PaintShop」のインストール作業を行った。

5時限

物理

l        物理の先生の授業サポートを行った。

l        Webに貼るための簡単な画像処理を教えた。

l        簡単な画像処理(トリミング)を教えた。

6時限

情報演習

l        「情報の統合的な処理と伝達」授業のサポートをした。

l        授業は日立の試作教材を用いて行われた。

l        日立の方も3人いらしていて、計7人で協力してサポートを行った。

 

 

 

11月11日木曜日

担当TA

海保、長尾、北、吉場

 

時間

科目

活動内容

昼休み

自習

l        生徒が10名ほど来ていたが、チャットやゲームをしに来ており、特に支援することはなかった。

5時限

情報演習

l        「情報の統合的な処理と伝達」授業のサポートをした。

l        授業は日立の試作教材を用いて行われた。

l        日立の方も3人いらしていて、計7人で協力してサポートを行った。

6時限

小論文

l        小論文については、特にTAは必要ないとのことで、戸塚高校の教職員の方々と談話していた。

 

 

 

11月12日金曜日

担当TA

本田、加藤、長尾

 

時間

科目

活動内容

3時限

情報演習

l        「情報の統合的な処理と伝達」授業のサポートをした。

l        授業は日立の試作教材を用いて行われた。

l        日立の方も3人いらしていて、計7人で協力してサポートを行った。

4時限

小論文

l        生徒がHOTALLを使って、小論文の課題に取り組んでいるので、操作のわからない点などをフォローした。

昼休み

自習

l        生徒が10名ほど来ていたが、チャットやゲームをしに来ており、特に支援することはなかった。2年生2〜3人と会話した程度。

 

 


11月15日月曜日

担当TA

岩堀、清島、田窪、長尾

 

時間

科目

活動内容

3時限

情報演習

l        紙面上でまとめたホームページ作成構想に従って、実際にHOTALLでホームページを作る作業を実施した。

l        ブラウザとWeb作成ソフトの違いを説明した。

l        背景や画像を取り込み、フロッピーに保存する段階までを支援した。

l        画像の透過をしたい生徒に、透過の概念と方法を教えた。

4時限

英語、保健

l        英語でWebページを作る授業

l        簡単な画像処理(トリミング)を教えた。

l        日本語の英訳に困っている生徒に、単語・表現などのアドバイスを行った。

昼休み

自習

l        生徒が10名ほど来ていたが、チャットやゲームをしに来ており、特に支援することはなかった。

 

 

 

11月17日水曜日

担当TA

松澤、小知和、米田、牧

 

時間

科目

活動内容

昼休み

自習

l        次の(物理)授業のために早くから来ている生徒が何人かいた。

l        来ている生徒はメールやゲームをやっていたので、特に質問はなく、生徒と雑談をした。

5時限

物理

l        先生が出張でいらっしゃらなかったので、代行の先生(「情報演習」の先生)が授業を行った。

l        代行の先生の授業で、生徒はかなり混乱していたので、個々の生徒の進度に併せてサポートをした。

6時限

情報演習

l        紙面上でまとめたホームページ作成構想に従って、実際にHOTALLでホームページを作る作業を実施した。

l        まだ作成構想が出来ていないグループもあったので、一緒に考えた。

l        簡単な画像処理を教えた。

 

 


11月18日木曜日

担当TA

海保、長尾、北、吉場

 

時間

科目

活動内容

昼休み

自習

l        生徒が10名ほど来ていたが、チャットやゲームをしに来ており、特に支援することはなかった。

5時限

情報演習

l        Webページ作成の授業を行った。

l        グループごとにテーマが決まっており、テーマによるわかりやすいWebページの作成のアドバイスをした。

l        画像処理について教えた。

l        簡単な3Dグラフィックの作成とそれをWebページに貼り付ける方法を教えた。

6時限

小論文

l        小論文については、特にTAは必要ないとのことで、戸塚高校の教職員の方々と談話していた。

 

 

 

11月19日金曜日

担当TA

本田、加藤、長尾

 

時間

科目

活動内容

3時限

情報演習

l        紙面上でまとめたホームページ作成構想に従って、実際にHOTALLでホームページを作る作業を実施した。

l        ブラウザとWeb作成ソフトの違いを説明した。

l        背景や画像を取り込み、フロッピーに保存する段階までを支援した。

l        画像の透過をしたい生徒に、透過の概念と方法を教えた。

4時限

小論文

l        小論文については、特にTAは必要ないとのことで、準備室で待機。

昼休み

自習

l        生徒が10名ほど来ていたが、チャットやゲームをしに来ており、特に支援することはなかった。

 


11月22日月曜日

担当TA

岩堀、清島、田窪、松澤

 

時間

科目

活動内容

3時限

情報演習

l        前週に引き続き、HOTALLでホームページを作る作業を実施し、完成を目指した。

l        希望グループの写真をデジカメで撮影し、その取り込み方法を教えた。

l        グループで作業を分担する方法を教えた。

4時限

英語

l        英語でWebページを作る授業の続き、完成を目指した。

l        自分のWebページを作るための情報をWebで検索する

l        方法を教えた。

昼休み

自習

l        4限から引き続き残っている生徒のサポートを行った。

 

 

 

11月24日水曜日

担当TA

海保、小知和、米田

 

時間

科目

活動内容

昼休み

自習

l        生徒が10名ほど来ていたが、チャットやゲームをしに来ており、特に支援することはなかった。

5時限

物理

l        物理のレポートをWebで作成するサポートをした。

l        グループごとにテーマが決まっており、テーマについての調査、レポートのアイディアのアドバイスをした。

6時限

情報演習

l        Webページ作成の授業を行った。

l        グループごとにテーマが決まっており、テーマによるわかりやすいWebページの作成のアドバイスをした。

l        画像処理について教えた。

l        簡単な3Dグラフィックの作成とそれをWebページに貼り付ける方法を教えた。

 

 


11月25日木曜日

担当TA

海保、長尾、北、吉場

 

時間

科目

活動内容

昼休み

自習

l        生徒が10名ほど来ていたが、チャットやゲームをしに来ており、特に支援することはなかった。

5時限

情報演習

l        Webページ作成の授業を行った。

l        グループごとにテーマが決まっており、テーマによるわかりやすいWebページの作成のアドバイスをした。

l        画像処理について教えた。

l        簡単な3Dグラフィックの作成とそれをWebページに貼り付ける方法を教えた。

6時限

授業なし

l        小論文の授業はなかったが、何人かの生徒が前の授業の引き続きで残って作業していたのでそのサポートを行った。

 

11月26日金曜日

担当TA

本田、加藤、北、長尾

 

時間

科目

活動内容

3時限

情報演習

l        前週に引き続き、HOTALLでホームページを作る作業を実施し、完成を目指した。

l        画像の取り込みを初めて行う生徒に対し、簡単な画像処理の方法を教えた。

4時限

なし

l        3時限の続きで残っていた生徒数名に、引き続きホームページ作りの支援を行った。また、次週の研究授業に向けて、ホームページの見本を作成されていた先生にも、先生からのご要望で、アドバイスを行った。

昼休み

自習

l        生徒が10名ほど来ていたが、チャットやゲームをしに来ており、特に支援することはなかった。

4.学生によるレポート

4.1.A(環境情報学部4年、男)によるレポート

4.1.1.はじめに

私は1999118日から3週間、毎週月曜日に戸塚高校で情報演習、および通常教科学習の情報関連授業で、TAを担当した。また、121日、同所での情報教育に関する研究授業を見学した。

そこで見たり感じたりしたことについて記すとともに、高校情報教育における「TA」について考察したいと思う。

4.1.2.戸塚高校の生徒について

まず、驚いたのは、生徒のメディアリテラシーの程度の高さである。すでに2学期も終わりにさしかかっているということもあり、基本操作でとまどう姿はあまり見られず、高度にアプリケーションを使いこなす生徒も少なからず見られた。TAとして、コンピュータの操作方法を教えるという局面はあまりなかった。

一方で、アプリケーションを使って何をやるかということに関しては、とまどっている生徒も多かったように思う。TAを担当した授業では、自由にホームページやレポートを制作するという課題が出ているケースが多かった。自由にテーマを決めてなにかをつくるということに慣れていないのだろう。やることがはっきりと与えられていて、それをこなす「問題解決型」教育の弊害かもしれない。

しかし、生徒はみんな楽しそうにやっていた。聞くところによると、授業外で熱心に課題に取り組む生徒も多いようである。

4.1.3.TA体験の反省

私自身の反省は、大きく分けて2つある。

まず第1に、生徒とのコミュニケーションがうまくいかなかったということがある。私はSFCでのSAの経験はあるが、家庭教師や塾講師などはやったことがなく、日常的に高校生に接することはない。高校生がいる空間に入り込むのはほぼ自分が高校生だったとき以来である。よって高校生とのコミュニケーションに慣れているとはいえない。

SFCSAをやる場合は、生徒の方からどんどん質問が来る。しかし、前述したように、戸塚高校の生徒は基本操作ではそれほど困っていないので、操作に関する質問をすることは少ない。それに、質問があっても、見知らぬ大学生ではなく、いつも慣れ親しんだ戸塚高校の先生に質問しがちである。よって、生徒とコミュニケーションをとるには、自分から生徒に話しかけていくしかない。

最初は、話しかける勇気(?)がなく、うろうろしていて、戸塚高校の先生に叱られた。そのうち、話しかけることはできるようになったが、どういうタイミングでどういうことを話しかけるかについては試行錯誤が続いた。

第2の反省は、自分自身の知識不足のため、必ずしも的確なアドバイスができなかったことである。当初はあまり気にならなかったが、やっているうちに、質問に対してうまく答えられていないと思うようになった。戸塚高校では、普段自分が学校や家で使っているのと違うアプリケーションを使っていたこと、画像処理に関して予備知識があまりなかったことがその原因である。事前の予習もしていなかった。

事前に戸塚高校のマシン環境や授業内容に関する情報の入手に努め、ある程度予習をしておくべきだったと思っている。

4.1.4.TAに求められるもの

体験を通して、TAに求められる資質について論じたい。大きく分けて、自分の反省から導き出せる2点があると思う。すなわち、

l        生徒とのコミュニケーション能力

l        マシン環境や授業内容に関する一定の理解

という2点である。

(1)生徒とのコミュニケーション能力

まず、生徒にとって、TAはちょっとしたことでも気軽に話しやすく、何でも質問しやすい存在でなければならないだろう。もし、とっつきにくく話にくい存在であれば、TAがいることで逆に生徒を萎縮させてしまうことにもなりかねない。

これは慣れの問題という面も多分にあると思う。同じ生徒を相手に何回かやっていくと、自然と慣れるものである。これは私の戸塚高校での経験からも、SFCでのSA経験からもいえることである。

戸塚高校で、第1回目にTAをやったときにとまどいや固さを隠せない私に、戸塚高校の先生が「もっとどんどん生徒の中に入り込んでいってください」と叱咤された。それ以来、より積極的になったと思う。

TAは教師でもなければ、保母・保父でもない。生徒とのコミュニケーションのプロである必要は全くないと考える。コミュニケーション能力というのは、コミュニケーションの巧拙ではなく、「積極性」という言葉で置き換えられるものかもしれない。そして、この意味でのコミュニケーション能力は、現場の高校教師のちょっとした指導で引き出すことができうる。

(2)マシン環境や授業内容に関する一定の理解

TAは、その授業で使われるマシン環境における基本的な操作方法は知っていることが望ましいと思う。授業時間が限られているので、生徒に質問をされたとき、TAが右往左往していたのでは時間が無駄になる。

少々難しい操作方法に関しては、調べるためのポインタを持っていることが望ましいと思う。たとえば、SFCでは、SATA全員にCNSガイドが支給されている。自分が知らないことを聞かれても、これを調べて答えることができる場合もある。また、私はJavaAPIを全て覚えているわけではないが、生徒から質問されれば私がAPIドキュメントを調べて教えることはできる。

わからない知識を調べるプロセスを教えるのが本当は望ましいが、入門者の段階では、自力で調べるのは相当大変なことで、やはり何らかの手ほどきが必要だと思われる。そして、それをやるためには、TAが相応の知識を持っている必要だ。

また、ただコンピュータの知識を持っているだけではなく、授業で何を教えるのが目的か、何がねらいか、ということも理解している必要がある。たとえば、プレゼンテーションツールの授業では、ツールの使い方以上に、コンテンツの作り方が重要かもしれない。この部分では、先生の果たす役割が大きいと思うが、TAも全く知らないというわけにはいかないだろう。

ただし、TAがそうした知識をひけらかすことになると、従来の「先生が教え、生徒が聞く一方的な授業」を助長することになる。知識があると、その知識をフルに使って一方的に教えることになりがちな面は否定できない。知識を持った上で、生徒に向けて発信する知識の量を自分でコントロールしながら、生徒にも考えさせる方向に持っていければ、言うことはないだろう。

4.1.5.今後の議論

では、そうした求められるものを持ったTAをどうやって確保するかという問題が当然出てくるだろう。これには、TAにどうやってインセンティブを与えるかという問題も含まれる。

これに関しては、今後の大岩先生の授業におけるグループ研究で深めたいと思う。ただ、言えることは、TAに求められるレベルというのは、そう高くないということである。高校で情報教育が始まる2003年度から数年たてば、その教育を受けて大学生になった人はそれ相応の知識を持っていることになるのだから、なおさらそうである。しかし、そのTAの能力を最大限に引き出すにはどうすればいいか、ということを考えるのは重要だろう。


4.2.B(環境情報学部4年、男)によるレポート

4.2.1.はじめに

 2003年より高等学校では「情報」が必修となる。このための実験授業が戸塚高校において行われた。11月より3週間行われ、私はTAとしてその支援を行った。そこで考えたTAという制度について質的な側面(TAの立場、役割)、量的な側面(TAの人数)の二点に分けてなどを踏まえながら述べる。

4.2.2.TAの立場および役割

 これから「情報」におけるTA制度を実施するとすれば、そのTAにどのような役割が求められていくべきかを考えたので、ここに述べてみたい。特にここでは生徒の学習をサポートする立場と教師側に立って効果的な授業の運営をサポートする二つの視点から考察する。

(1)生徒の学習・理解のサポート

教師に代わる質問の窓口としての役割

これは教師のように生徒の疑問に答えるという役割である。しかし、コンピューターの知識については、授業や学習指導要領以外にも疑問に感じることが多い。このため質問は授業に関する質問、コンピューター特有の文法から豆知識的なことなどまで質量ともに多く、全て教師が応えていたのでは大変であり、授業の進行の妨げにもなりうる。そこで、TAが質問に応じて生徒の疑問を可能な限り全て応答できるようにする。

今回の実験授業では、授業時間しか生徒と接することができなかったが、授業時間外で電子メールによる質問のやりとりは数人の生徒との間で行なった。

このように生徒が気軽に質問できるためにはTA自身が生徒にとって質問しやすい資質を持っており、教師側も生徒がTAをしっかりと認識できるように雰囲気を作るべきである。

操作の教唆

コンピューターの操作に慣れていない生徒の場合は間違って別のキーを押してしまったり、どのキーを押していいのかわからない。これにより、コンピューターに予想外の場面が現れたり、操作に迷っている内に授業が先へ進んでしまっている場合が多い。今回の実験授業でも、操作を行うことが授業の大部分を占めていたが、コンピューターを思うように操作できない生徒は授業についていくのが困難であった。

TAはこのような生徒に対し、適切に押すボタン、コマンドなどを指示する。授業の本質とは関係の無い操作の部分で行き詰まらないようにしなければならない。しかし、生徒がコンピューターの操作になれるために、TAは教えるだけで実際の操作は生徒が行うべきである。

授業中のマシントラブルへの対処

「情報」科目の授業では、多くがコンピューターを使っての実習形式で授業が行われることが予想される。今回の実験授業でも授業時間の半分以上がコンピューターを操作する実習形式であった。しかし、コンピューターによっては(そして多くが)動作不安定であり、よくトラブルが発生する。これによって生徒の学習が大きく阻害されてしまう。

このため、TAが授業中にマシントラブルに遭遇した生徒のサポートをする。トラブルの解決することももちろんやそれが時間のかかりそうであれば生徒に別のマシンを操作してもらうなどの処置をとる。

この役割をこなすためTAはマシントラブルの解決のために授業で使うコンピューターについて熟知し、ネットワークに関しても詳しくなければならない。

(2)教師の授業運営におけるサポート

授業計画のサポート

学校教師は教育のプロフェッショナルではあるが、コンピューターのプロというわけではない。授業で扱われるコンピューター技術について完全に理解しているとは限らない。例えば、プログラムの授業において実際に動作するプログラムを見せることは極めて有効であるが、そのために一種の「おまじない」のような技術的に高度なことを意味する文をつけなければならないこともある。この部分は教師が必ずしも理解しておくべき内容ではない。しかし、この「おまじない」を理解することもプログラムの動作に必須である。教師が知っておかなくとも良い技術を持ち、必要があれば理解のために簡単な説明ができるようにしなければならない。

また、授業の計画、内容を考えるときも技術的な知識をもってサポートすることができる。一例としてもデモプログラムを作成する、サンプルプログラムを提供するなどである。他にも日進月歩なコンピューター技術を教師に代わってアンテナ役として常に知識を得て、授業に反映させていくことも考えられる。

特にTAは経験的にコンピューターの勉強においてつまづきやすい点を知っているので、授業の理解度が高まる。

進度の早い生徒のサポート

他の教科も一部そうであるが、情報科目においては生徒の能力に激しいばらつきがあることが予想される。自宅にコンピューターがあったり、コンピューターゲームに興味を示す(昨今の男子高校生は大半そうであるが)などの要素によって大きくばらつきがあるのは否めない。

TAの役割としては、進度の速い生徒の質問に答えられるようにしなければならない。進度の速い、自ら勉強している生徒に対して授業と関係無いことでも質問に答え、又TA自身の専門外のことであればそれを専門にしている人間を紹介するぐらいはするべきである。また、これらとは別に適切な書籍を紹介したりする。コンピューターのことをより深く勉強したくなった生徒に道を示してやることも必要である。

4.2.3.適切と思われる授業中のTAの人数

 次に今回の実験授業をケースとして、前述したような役割を持つTAがどの程度必要なのかを述べる。今回のケースでは201クラスで3種類のクラスがあった。もちろん生徒によってTAの必要性は個人差があり、これら3種類のクラスでも一様に決められない。しかし、生徒たちの平均的なレベルを基準にし述べていく。

 また、今回の授業においてはコンピューターを操作することが授業の大部分を占めていたためTAが授業中に行うことはもっぱら操作に関する説明や教唆が大部分であった。

4.2.4.まとめ

 私は戸塚高校の実験授業を終えて、コンピューター技術を教える「情報」の授業には教師だけでなくTAという立場で私達のようなコンピューターを得意とする大学生が支援することによって最大の成果をあげ得ると考えた。コンピューターに関する知識は既存の枠組みで含まれない広大な知識が必要とされ、またそれが毎日のように新しくなる。このために「情報」科目をよりよくするのであれば、技術的なサポートとしてのTAは必須となると考えた。今回の実験授業ではTAと先生が一体となって生徒の情報能力を育てるということを垣間見せてもらった。2003年以降はもっと「情報」がより良くなるように考えていきたい


4.3.C(環境情報学部4年、男)によるレポート

 まず、全体的に、質問が少なかったと感じた。原因としてまず、中学、高校生は、質問するのが恥ずかしい年頃だという、時期的な問題。次に、TAの雰囲気が、フレンドリーでなかったこと。(スーツを着ていたこともある)「外部の先生」というような感じで、むしろ、質問しづらい雰囲気であった。

 

 さて、これに対して、私が感じたのは、「できなくてかつ質問しない生徒」をどうするかである。相手が大学生ならばこれは自分の責任であるが、中、高校生が対象の場合、そのまま放っておくことはできないと思った。例えば「~」をキーボードでどう打ったらよいのか迷って進まない生徒を見つけたら、声をかけてあげたほうがよいであろう。しかし、あまりにも後ろから指示しすぎると、生徒としては、「監視」されている感じがして楽しくないだろうし、そのような環境で「やらされて」も教育効果は上がらないであろう。

 次に、今回授業で使う端末及びネットワークの状況を授業前に聞かされていなかったので、苦労する場面があった。例えば、今回の戸塚高校が使っている横浜市の「YYNET」では、ログイン方法が、一般的なマシンと異なるため、生徒がログインできない時の対処に最初は困った。また、キーボードで日本語入力するためのキーも、一般的なマシンと多少異なったため使ったことのない私は、教えるのに、多少手間取ってしまった。そのような状況では、例えば「ネットワークが使えない」といった問題がおきた時、何も対処ができない。(先生が対処してしまったら、授業をする人がいなくなってしまう。)そのため、TAとしてその環境に対する最低限の知識は必要であると感じた。

 授業内容に関しては、授業で使った教材(アプレット)は非常によくできていた。しかし、教える先生の教材に関する理解があまりに少なかったと私は感じた。よって、教材が導くテーマを理解するというというよりも、教材を何とか使いました。という印象を受けるような授業であった。

 そして、教材そのものでは、2つ目の教材はは、ネチケットの知識を与えた後、それについて、ネットワークの電子会議で議論するというものであった。たしかに、これは「電子会議」という分野にも触れられるし、ネチケットに関する議論もでき、一石二鳥なやり方ではある。しかし、それは、参加者全員がタッチタイピングができる場合の話である。タッチタイピングができなければ、キーボードの操作に集中してしまい、考えるのと投稿するのにタイムラグが生じるので、考えをそのまま文章にするのは不可能である。また、そのような状況では、相手の意見を読んでいる余裕はない。このような状況では、本質である、「ネチケットに関する議論」には程遠いものになってしまうと感じた。


4.4.D(環境情報学部3年、女)によるレポート

4.4.1.初日に感じたこと

(1)コミュニケーション

 まず、想像していたほど、高校生の相手は大変ではなかった。実際に接するまでは、閉鎖的なのではないか、声をかけても反応が悪いのではないか、私達に壁を感じているのではないかと多少の不安があった。情報処理のアシスタントは、生徒の学習をサポートすることが役割だが、コミュニケーションがきちんとできてこそ、その成果をあげられるのではないか、と思っていたため、こちらからも、意識的にコミュニケーションを取るようにした。

 こちらから話しかけたとき、生徒はそのタイプによって異なるものの、概して明るい表情を見せていた。こちらが、わからない点があるかどうかを確かめたり、生徒が興味を示すであろう話題に触れると嬉しそうな顔を見せた。ただ疑問を解決してあげるだけではなく、こういう、なるべくアシスタントとの壁が薄い状態にしておいた方が、授業をやりやすいように感じた。

 

(2)内容理解

この日は日立が開発したブラウザで利用するプレゼンテーションツールを使って、実際に内容を決定し、プレゼンテーション用の原稿を作成した。どのグループも事前に内容を決めていたため、それに関する心配は全く無かった。だが、この日に用意されていた内容があまりに盛りだくさんだったせいだろうか、生徒は、とりあえず数枚のスライドを作ることで精一杯だったようだ。

日立が考えていた目的は、「まずプレゼンテーションとはどういうものかを理解し、そして、自分たちの主張をアピールするためには、どう表現したら効果的なのかを学習し、それをもとに実際にスライドを作成、クラスメイトの前でプレゼンテーションを行う」というものだったようだ。教材にはその一連の流れが説明されているページが用意されいた。しかし、生徒たちにとっては、それが、今まで多少使い慣れているブラウザ上で使用できるアプリケーションとはいえ、そのアプリケーションのインターフェースの悪さに戸惑い、また、今日やらなければならないことの多さから、その説明を理解する余裕などないように見うけられた。

アプリケーションの使い勝手についてだが、かなりシンプルな仕様になっており、それは評価できるが、若干ややこしい部分が目立った。生徒たちがそれに戸惑っていると、時間を考慮し先生が、「はやく、はやく」「まだ1枚しかできてないよ」と急かすため、全体的に、11枚のスライドがかなり内容の薄い出来あがりになってしまったようだ。

結局、ベルが鳴り、授業を終えてみると、「あれ?今日は何の授業だったのだろうか」と感ぜざるを得ない状況だったと考える。

我々も、初めて目にするその“使いづらい”アプリケーションの操作を教えつつ、あまり進んでいない生徒のフォローをしつつ、プレゼンテーションの準備と言う観点から生徒の作成するスライド自体へのアドバイスを行いつつ、とこちらも盛りだくさんで、あまり余裕の無い授業だったと感じる。

その日の授業の目的を考慮すると、より印象に残る、より優れたスライド作りのアドバイスをしたい所だが、正直な所、全ての生徒がコンピュータ自体をてきぱきと使えるわけではなく、ソフトに対する一般的な“勘”があまり無いため、現実問題としては、そちらのサポートに回ることになる。生徒のサポートをするのが我々の役目なので、それ自体問題は無いとは思うのだが、長期的、多角的に情報処理というものを捉えた場合、それで良かったのだろうか、と疑問が残った。

 

4.4.2.二日目、三日目に感じたこと

(1)コミュニケーション

 前回生徒が積極的に質問に来ないのは、初対面だったためと考えていたが、二回目、三回目もさほど状況に変化は無かった。高校生は概してなかなかわからないことがあっても手を挙げたり、アシスタントの誰かを捕まえたりして質問をするのが苦手なようである。困ったときは、すぐ隣に座っている友達や、クラスの中のコンピュータに詳しい生徒、または担当の先生に質問するようだ。しかし、それには限りがあるので、こちらからなるべくそういう様子をキャッチするようにした。だが、作っている様子をじっと後ろから見られていることを中高生は特に嫌がるため、生徒の端末の後ろに居る時間はなるべく少なくし、全体を何度も回るようにした。一人で解決できそうな様子の場合、あまり操作自体に口出しすることはせずに、むしろ他の話題で話をし、明らかに作業がとまっている生徒の場合は、「こうしたいんだよね?」と確認してから、私は口でわかりやすく説明し、操作はなるべく生徒自身の手で行ってもらった。

 

(2)内容理解

 今回はホームページを作ってみよう、というのが授業の目的であった。何回かに渡って作成することができるため、生徒の様子は、前回と比較して余裕があり、落ち着いて作業に取り組んでいるようだった。

ホームページという概念については全員が理解しており、どんなものを作ったら良いのかほとんどの生徒がイメージできているようだった。生徒が抱える問題と言えば、どんな内容を書いたら良いのか、画像を加工するにはどうしたら良いのか、GIFアニメを作成するにはどうしたら良いのか、背景に画像を貼るにはどうしたら良いのかなど、全て具体的な内容であった。そのため、その都度生徒の要望に沿ったアドバイスをするため、比較的サポートしやすかった。 また、進んでいる生徒と、そうでない生徒とに分かれていたので、前者にはブラッシュアップ的なアドバイスを、後者にはどのようにしたら見やすくて、イメージどおりのページが出来あがるのかを考えながらアドバイスした。

4.4.3.全体を通しての感想

今世の中にはあらゆるソフトが出回り、色々なことを簡単に実現出来るようになっている。また、まだ限られた生徒だけではあるが、電子メールをやりとりしたり、webページを閲覧することが自由にできている。このような中で、今高校生にはどのような情報処理教育をすれば良いのだろうか。電子メールをやりとりしたり、webページを作成したり、何かソフトを使ってあるものを作ることも大事だと思うが、このような何かの使い方を学ぶスタイルの学習方法だけで良いのだろか。あまりレベルを挙げる必要は無いが、これからの社会を担っていく高校生には、情報処理社会で先頭を切って生きていくための“センス”を養うための、もっと広い意味での学習が必要なのではないだろうか。TAもアシスタントとは言え、先生と一緒にその意味を共に考え、理解した上で、指導するべきだと考える。


4.5.E(環境情報学部2年、女)によるレポート

  戸塚高校へは、情報処理教育のTAをするために 行った。教育分野に興味ももっていたし、高校の授業にTAを派遣する、という発想が 面白いと感じた。しかし、考えてみれば、私たちがSFCで受けた情報処理教育の時間にもTAがいたのだから、これからより高度な水準が求められる、中学校、高校、はたまた、小学校にもTAがいてもなんらおかしくないはずだ。むしろ、そうなった方が良いのではないか。自分の経験からも思うことだが、特にコンピューターの使い方、スキルは体得するものなので、本をよんだり、話を聞いただけよりも、実際に人に助けてもらったりして、一緒にやることが一番覚える。

  次に、実際に授業に参加してみて感じたことを述べる。先生や、TAは、 ヤルキがなかったり、注意力散漫な生徒たちに対して常に前向きに話しかけ、同じことを繰り返し教えなければならない。弱気であってはならない。生徒になめられるからだ。先生やTAをナメテいたり、えり好みする生徒には とっつきにくい。もし、先生が一人であったら、その先生を苦手と感じてしまう生徒にとって、授業はつらくなってしまう。そこで、TAが2人でもいれば、生徒は教えてもらう人を選択できるので、そのような生徒にとってはTAは良い存在であろう。

  今回の授業では、HP作り 授業内容だったが、このような授業は学科の授業よりもむしろ、美術の授業などの授業形態に 近いのではないか。生徒たちが、どのようにコンピューターというツールを使って自分なりに気持ち良く、遊べるか、楽しめるか、何かをつくれるか、学べるか、ということであるからだ。絵を書くときも、物を作るときも、自分の手で触り、目でみて、人がどのようにしているのかを真似しながら次第に技術を体得する。

以上のような感想をもった。


4.6.F(大学院修士課程1年、男)によるレポート

ティーチング・アシスタント(以下、TA)の意義を述べるにあたって、教師・生徒の一対一の従来のシステムについて考察せざるを得ない。一人の教師が40人前後の生徒に対して教鞭をふるうという我が国のシステムは、教師の知識やモラルなどへの社会的な信頼感を一つの要因として成立したものであり、対象となる教育分野が体系的である限りその有効性はある程度保証されていた。だが、体系的な学問が流動的かつ不安定な状態を保つ場合もある。そのような状態にある領域を生徒に教える役割を担っていたのが塾の存在である。具体的には、たとえば数学には体系的・概念的な、学校で学ぶ数学知識と、技巧・技術に重点を置く、受験で用いるような塾で学ぶ数学知識がある。

情報教育に体系はない。教師が10人いれば、情報に対する10通りの解釈と教え方が存在する。また、技巧・技術的な領域と体系的な領域が切り離せない(技術への理解がなければ、概念の理解は難しい、ということ)という特徴をもっている。つまり、情報を教える教師は、従来塾の講師が担ってきた役割と、元来教師が担ってきた役割の二つを同時に背負うことになる。TAはその技術面におけるサポートとして期待されるものであり、以上からTAを塾の講師と同じように定義することも一つの解釈として可能であると思われる。コンピュータに関する技術的な理解は時間とともに変化していく。受験において塾の講師が毎年違う対策を練るのと同様に、TAも環境にあわせた知識を備えることが要求される。そのように教師側が対応していく上で困難な局面にTAの存在意義が生じるのである。

今回、戸塚高校へTAとして派遣されたが、以上に述べた机上の論議と現場におけるTAの認識は大きくかけ離れていることが明らかとなった。また、大学生をTAとして高校という閉鎖的な空間に招き入れる事に関しての教師側の意識は複雑なものがあることは予想していたものの、実際にそれを目の当たりにしてみると、今後高校においてTAというシステムを導入する際に大きな障壁となるであろう事を予測するのは難くない。以下に挙げるのは実際に三日間で経験した問題点である。

第一に、「TAの存在する教室風景は、これまでの高校の授業風景とは全く異なる」という点に関しての問題である。授業の進行におけるTAの支援によるベネフィットは考慮しないものとして、TAの介在する授業は従来学校の先生方の考えているような授業ではなくなる、という点に注目しなければならない。TAの役割として、生徒と先生の間の空間を埋めるというものがある。基本的に教師は一方的に教える側の立場にまわり、そこから生じてくる簡単な質問などはTAがフィルタとして吸収して、吸収しきれるのであればその段階で質問というベクトルは消滅する。これがTAのいる授業の一つの図式である。しかし、現場の教師に存在する一つの根強い考えがある。それは、教師は一人一人の生徒に対して精神的な指導も行うべきである、という考えである。もしそれが授業を介して行われると教師が考えているのであれば、TAの存在は必ずしも歓迎されるべきものではないという意識が生じることもある。

そこで、第二の問題点が発生する。いわば外部者である大学生のTAに、教師側が自分の生徒に対してどのレベルまでの接触を許せるか、という事である。つまり技術的・職業的なTAに徹するべきなのか、あるいは一人の大学生として、トモダチ感覚で生徒にアプローチすべきなのかは、授業を担当する教師の考えによって左右されるのである。我々が「大学生」のTAとして自覚するのであれば、後者のようにトモダチ感覚で接するべきである、という考えもある。だが、実際にはTAとしてのガイドラインは存在していないので、アプローチ方法はTA個人個人に任される結果となる。それはすなわち、良い方向に表現するのであれば「個性豊かなTA」を生み出し、悪い方向で表現するのであれば「統一性のないTA」を生み出す。大学生のTAと社会人のTAとの間に境界線を設けるのであれば、このようにガイドラインの存在しない個性豊かなTAもその存在意義はあるだろうが、それが現場にどのように受け入れられるかは、まさに現場毎に異なってくるのである。従って、今回のように大学生のTAを数多くの教育現場に派遣してデータを収集しても、おそらくその結果は千差万別、バラバラであろう。つまりは「TAと授業方針との相性」全てにかかっているのではないか。

以上がTAというシステムを高校という教育現場に持ち込んだ際に発生したマクロ的な問題点であるが、そのほかにも、今回の実験におけるミクロ的な問題点は列挙するに暇がない。まず、慌ただしく進んだ三週間の中で、結局私の週のTAは自己紹介する時間もなく、生徒に名前さえ覚えてもらう機会がなかった。生徒が得た情報は、「慶應義塾大学から来ているアシスタント」という肩書きだけである。そこから察するに、先生方は我々を職業的なTAとして教室に招き入れたいと思ったのであるが、実際にはそのようなことは考えておられないようであった。また、作業そのものはチームワークであったのだが、生徒に対してマンツーマンで教えるのか、あるいはTA各々が万遍なく教室をまわって教えるべきなのかが明確ではなかったため、TAの目の届かない「死角」が出来てしまっていた。授業の進行についてもTAは簡単な説明を受けるのみで、あとは時間内に進めるだけ進ませるという授業であった。これについては先生方も「情報」の授業の進行そのものが手探りの状態であることも起因しているのであるが、実際に「情報」が全国規模で施行される際には、先生もTAもこのような状態では問題があるように思える。また、TAのレベルにも問題があったように思える。学校のコンピュータで使用しているソフトは、実社会において使われている製品と異なる場合が多い。戸塚高校で使われていたホームページ作成ソフトや画像編集ソフトも、やや癖のある操作系でありTAでも使いこなせていたのは全体の半数程度であったように思える。また、大学生と高校生という近い年齢同士だから、授業が三回もあればすぐにうちとけるか、というと、けっしてそのようなことはないと思った。むしろ、訓練をうけた社会人TAのほうがうまく馴染んでいけるケースも十分に考えられる。大学生のTAとして、周囲から何を期待され、何をすべきなのか、明確にすべき点であろう。

2003年に、果たして大学生がTAとして高校に赴く可能性があるのであろうか。その可能性について論じる前に、慶應義塾湘南藤沢キャンパス(以下、SFC)におけるTAの歴史について触れる必要がある。現在はSFCに在籍する学生がTAとして自分の後輩をサポートしているが、このシステムがスタートした当初、つまりSFC創設間もない頃には、矢上の理工学部の学生が数多くTAとして派遣され、試行錯誤しながらも非常に多くの成果を残し、去っていった。これは非常に主観的な意見となるが、TAは最終的に自給自足するのが健全な体制である、という見方を自分は持っている。むろん、当初は大学生TAや社会人TAが高校に赴いて手助けをする、という事は必要であるし、それによる付加価値も生じる。高校と大学の間がシームレスになり、社会との壁がなくなる、という点である。だが、高校におけるTAの望むべき姿というのは、その学校でコンピュータに詳しい学生が先生をサポートし、授業をサポートするという体制であるように思える。どの高校にも、先生以上にコンピュータの技術的な知識に優れている生徒はいるものである。しかも、今後生徒は小学校・中学校においても情報教育を受けてくるようになるために、一層コンピュータに詳しい高校生も出て来るであろう。最終的には、このように高校でもTAの自給自足が行われるようになれば、TAは制度として確実に成立するであろう。

しかしながら、その前提としてはやはり大学生TAや社会人TAが現場にてそのシステムの有効性を実証する事は不可欠である。ただ、大学において「安定した能力を持つTAを育成する組織」を作る必要性があるかどうかは、むしろ社会が、そして現場の先生が「大学生TA」に対して何を求めるかによって変わってくる。それを見極めていくためにも、今後ともこのような実験は続けるべきであろう。


4.7.G(大学院修士課程1年、男)によるレポート

4.7.1.TAについて

情報の授業のアシスタントに、大学生、あるいは大学院生をTAとして迎えるという今回の試みでは、現状の教育現場の問題と、これからの課題の両方が浮き彫りにされた結果になったと感じた。

大学生がTAとして情報科の授業に入るということには、教育現場を取り巻く現状にまつわる3つの問題がある。

一つは、教師側の理解である。大学生の中には、もちろん現場の状況が理解できていない者もいれば、教育者としてまったく未熟な者もいる。そういった人間が、教育現場に入ってくることを好ましく思わない教師が、少なからずいるということである。実際に大学生がTAとして入ってきて、その状態を目の当たりにしなければ、本当のところはどうなのか解るはずもないし、解ったところで毎回そのようなレベルの大学生がTAとして入ってくるかどうかの確証もない。

また、TAとして派遣されてきた大学生を、一体どのように扱えばいいのか、解らないという事情もある。これまで教師は、同僚の教師たちとの話し合いや会議の場はあっても、実際に授業の中で二人以上が助け合って授業をするという機会に遭遇したことがほとんどないのが実情である。

今回のTA派遣の試みは、「とりあえず入れてみよう」という意味合いが強かったように思える。そのため、TAをどのように扱うべきか、TAの立場はどのようなものなのか、「手伝う」とは、どのレベルのものまでを指すのか、などの明確な定義、線引きが存在しなかった。そのため、上記のような理解の問題や扱いの戸惑いなどが生じ、あるいは以下に述べるような、TA自身の迷いにもつながったのではないかと思う。

次に、TA側の理解である。TAとは何なのか、何をやればいいのか、どの程度まで干渉していいのか、といった線引きが、明確でなかったことから、積極的過ぎた場合と、消極的過ぎた場合の、極端な二つのパターンがあったようにも思える。それが、生徒側の反応をも二分し、「良かった」と答える生徒もいれば、「必要なときだけ声をかけてくれればいい」と、余計な干渉を拒む生徒もいた。

また、TAの能力も問題であった。TAが何をすればいいのかという上記の問題にもつながることだが、TAにどの程度の能力が求められているのかわからないままであったため、結果として、実際の現場で答えられないような質問に遭遇し、かえって、印象を悪くしてしまったこともあった。アシスタントという立場が何なのか、それを明らかにしなければ、ただの雑用的な手伝いなのか、教えることもできるアシスタントなのか、立場が曖昧なままになってしまうと感じた。

最後に、TAと教師のバランスという問題である。これもまた上記のTAの能力という問題につながることだが、TAの能力が高すぎ、教師の能力が低すぎた場合、教師の存在意義が問われてしまうという問題がある。実際、情報を教えることができる教師は、数が限られており、このままでは授業にならない。だからこそそこにTAを入れるわけだが、その際にTAの能力と教師の能力に差がありすぎては、教師がいる意味が、まったくなくなってしまう。上記の問題とあわせて、TAにどこまで求めるのかを明らかにし、より円滑に情報の授業が執り行われるようにしなければならない。

 

4.7.2.「情報」の授業について

情報の授業とは、本来何を教えるべきものなのかを考えると、文部省が提案する、「情報活用能力」の育成であることは間違いないはずである。それでは、今、試験的に行われている情報の授業が、それを満たすものであるかどうかを見てみると、必ずしもそうとはいえない状況がある。そこには、二つの問題がある。

一つは、授業の内容の問題である。これは、教師の能力だけの問題ではない。情報が一体何を教えるもので、どのように教えるのかが、まったく明確になっていないことが、根本的な原因としてある。情報活用能力を育成するのであれば、単純な「作業」を繰り返す授業であってはいけないはずである。しかし現状は、例えば、与えられたプリントをそのままコンピュータ上で再現することであったり、不可解なソフトを用いて、よく解らないまま作業をし、とにかく完成させることが目的となってしまっている。少なくとも、ほとんどの生徒は、今自分がしている作業や行為が、一体何を意味するものなのか、それによって何ができるのか、何が起こっているのか、そういったことをまったくといっていいほど理解していない。アプリケーションの操作でさえそのような状態であるから、それ以外のファイルの操作や、ディレクトリなどの構造を理解しているはずもなく、そのため、アプリケーションの操作中に、そのアプリケーションとは直接関係のないところでつまづいたりしてしまう。そうなると、それこそ「つまらない」「難しい」といった意識が芽生えてしまう。どうすればよりよく理解できるのか、どうすれば活用能力が身につくのか、授業の展開やカリキュラムを練り直す必要があると感じた。また同時に、

もう一つは、設備の問題である。一つのクラスで授業をする場合、一人一台が割り当てられていることはすばらしいことであるが、そのマシンのスペックや、インストールされているソフトウェアなどに問題がある。それほど数多くのアプリケーションをインストールするわけではないのだから、あまりハイスペックなものは必要ではないが、それでもストレスを感じないで済むようなレベルのものは必要ではないだろうか。あまりにストレスを感じるものであると、画面がフリーズに近い状態になることが多く、それをエラーや故障であると勘違いしてしまっている生徒も少なからずいた。また、処理中であるのに、クリックできていなかったと勘違いし、何度もクリックを繰り返し、余計に負荷をかけ、結果としてフリーズを引き起こしてしまっている例もあった。このように、ある程度のスペックによってストレスを取り除かなければ、それこそ学習の妨げになりかねない。一方、ソフトウェアにも問題がある。もちろん、ハードウェアのスペックが低いため、それほど良いソフトウェアは望めないにせよ、今ではもっと便利なソフトウェアがあり、あえて不自由なソフトウェアを利用することが良いことであるとはとても思えない。また、学校という特殊な環境であるため、ネットワーク化されたコンピュータを管理下において利用する場合が多いが、そのログインのシステムやそのためのソフトウェア、インターフェイスなどが、かえって使いづらくし、理解を妨げているものであるように思える。管理のしやすさと使いやすさを求めた結果の産物なのであろうが、それによって確かに操作は簡略化され、「ここを押しなさい」の一言で説明が終わることもある。しかし、それはコンピュータをますますブラックボックス化することであり、生徒に「作業をしている感覚」を植え付ける結果になりかねない。

ところで、以上の二つの問題が解決したとして、TAのいる授業について考えてみると、TAに求められることは、次の二つのうちのどちらか一方であるだろうと感じた。

<考えられるTA像@ Teaching Assistant>

ここでのTAは、教師が教えることをアシストするだけである。例えば、生徒が操作が解らなくて困っているとしたら、そこで操作を教える。ほかにはプリントを配ったり、教師の指示を伝えたりする。それ以上のことはしない。基本的に教えるのは教師であり、TAはそれを手伝うことしかしない。

<考えられるTA像A Assistant Teacher>

ここでのTAは、教師とともに教えるアシスタントである。例えば、生徒が捜査側からなくて困っているとしたら、そこで操作も教えれば、その意味も教える。表面的な操作法だけでなく、理解を伴わせる手伝いをする。教師が教えるのはもちろん、TAは教師だけではカバーしきれない生徒を教える。

 

どちらが良いかは別として、以上の二つのパターンがあるとしたら、そこで求められる教師、TAの能力はどのようなものかというと、@であれば、TAの能力はほとんど問われないが、一方で教師の能力はかなりのものが要求される。生徒すべてをカバーする必要があるからである。だが、TAを採用するという制度を作るとした場合、その能力差があまり現れない、採用しやすいという利点を考えると、このパターンも一考に値する。

Aになると、教師の負担は多少軽減されるものの、TAには教師に近い能力が求められる。すべての生徒を効率よくカバーできるという点では良い方法であるが、そのレベルのTAを採用しなければならないという点では難しい。しかし、生徒にとってはこちらの方が、確実に理解できる可能性が高い。だが、Aには先述した、教師とTAの能力のバランスという問題がつきまとう。TAに高い能力を求めるということは、同時に教師にも高い能力を求めるということになる。それでも、生徒を第一に考えれば、このパターンも考えなければならないだろう。

 

以上、戸塚高校にTAとして派遣されたときの感想を踏まえて意見を述べた。情報科設置への移行の段階として、現場でどのようなことが起こっているのかを理解する、非常に良い機会であった。


4.8.H(環境情報学部3年、女)によるレポート

4.8.1.TAをしてみて感じたこと(疑問、反省点など)

TAをしていて一番大変だったのは、自分の技術力の無さと戸塚高校の環境になれず戸惑ったことだった。学生にわからないところを聞かれても、HOTALLというソフトの操作方法がわからず、おどおどしているうちに生徒さんにあきらめられてしまうことが多かったこと。そして、環境がSFCと全く異なるので、単純に保存やWindowsを起動するという作業だけでも、自身が持てずに生徒さんの役に立てないことが多々あった。また気軽に、コンピューターがあまりわからなくても大丈夫という言葉に甘えてTAをしてしまったが、実際に生徒さんにホームページの相談、新しいアイディアの提案をしてあげるにはそれなりにコンピュータを操作し、ホームページを制作することに慣れた人の方が、より力になって上げられるのではないかと感じた。

4.8.2.授業の内容を見て感じたこと

授業を見て感じたのは、授業にかけているのは、コンピューターの操作スキルの講義というよりも、コンピューターを使って何をしたいのか、どのようなコンテンツを作成するのかという内容に関するフォローの不足である。もちろん授業時間には制限があり、情報の先生一人で、コンピューター操作とコンテンツの指導までをしていくことは不可能だろう。しかし、TAでは生徒さんにソフトの操作を教えてあげるは容易であったが、どのようにデザインすればいいのか、どういうコンテンツをつくればいいのか、どのようなテーマを設定すればいいのかという踏み込んだところまでをフォローするのは難しのではないかと感じた。これは先生方の課題でもあるのだろうが、情報の授業だけでなく、他の授業などとも連帯して生徒さんに問題意識や情報発信をする意義などの必要性をどこかでうまく教えてあげる必要があると思う。そうでないと、せっかくスキルとして得たコンピューター操作能力が生きていかないように感じられた。

 

4.8.3.TAとして適した人材の提案

上記にも書いたが、TAになる人には、生徒さんの質問と好奇心に応えてあげられるように、やはりコンピューターのスキルがそれなりに備わっている人がなるべきだと思う。しかし、それと同等に必要なものは、生徒さんに気軽に話しかけることを気負いなくできる人だと思う。自分がTAをしていて、一番緊張したのは、生徒さんと話すきっかけを作る時だった。ただ突っ立ているだけで、生徒さんから話しかけてくれるということはほとんどなく、わからないことがあると、生徒さんとしても、慣れている先生に聞くほうが初めは聞きやすそうだった。しかしこちらから、大丈夫か?困っていないか?などと話しかけることで、だんだんTAの方にも質問してくれるようになった。TAには生徒さんからは話しかけてこない、なんでもTAからいかないとだめなのだよということを意識して望んでもらう必要がるのではないだろうか。

4.8.4.今回のプロジェクトの考えられる改善点

(1)TAとして働くために事前にしておくべきこと

 前々から触れている様に、TAをしていて最も困ったことは、使ったことのないソフトをいきなり使わなくてはいけなかったことと、戸塚高校のコンピューター環境に慣れていなかったことが上げられると思う。そのために、もし来年にもこのようなプロジェクトが行われることがあるとしたら、まずTAに戸塚高校のコンピューター環境と授業で使用するソフトの講習会などをする必要があると思う。講習会といっても、そんな大掛かりのものである必要はなく、30分〜1時間ほどあれば、普通のSFCならば、体得できるものであろう。

(2)TAとして戸塚高校にいる時間

 もうひとつ改善されるべき点としては、TAプロジェクトの時期の延長である。今回のプロジェクトでは3週間という短い期間で、殆ど生徒さんにと話す時間がなく、普通に自然に話せるところまでは達することができず、もしもっと気軽に話せればできたような話が全くできなかった。TAとしてコンピューター操作などを支援する以外にも、大学生のTAならば、受験を控えた高校生の相談にものって上げられたかもしれない。しかし、今回のように短い期間ではそのような関係までは至ることができなかったのが残念だった。

5.調査結果

今回のTA支援実証実験における、参加TAと対象生徒に対してのアンケート調査結果をグラフにまとめた。先生に対してはアンケートに基づくヒアリング調査を行い、その結果をまとめた。

(アンケート原本は付録[3]を参照のこと)

5.1.生徒に対するアンケート調査の結果

5.1.1.Q1 あなたがとまどった時にアシスタントはすぐに対応していましたか?

 

全体では88%がすぐに対処できたと考えている。最も評価の良かったのはクラスCあり、94%が良い評価を下している。だが、そのうち11%が「強くそう思う」であるのに対し、クラスB45%もの人が「強くそう思う」という評価を下している点は興味深い。男女の差はあまり見られない。

 


<クラス別>

 

<男女別>

 


5.1.2.Q2 アシスタントはあなたに分かりやすく説明していましたか?

 

全体で78%が分かりやすいと答えている。おおむね良い評価を得ているが、この質問に関してもBクラスは94%が「分かりやすい」という評価を出しているが、クラスD61%と低い。Q1.でもクラスDは評価が低かった。男女差では、男子のほうが良い評価を出している。

 


<クラス別>

 

<男女別>

 


5.1.3.Q3 アシスタントがいることで、授業の内容が理解しやすくなりましたか?

 

全体では70%が「そう思う」と答えているが、クラスCは一転して50%を切る。いずれにせよ、全体でも個々のデータでも、けっして高いとは言えない数値である。この質問に関しては女子は厳しい意見を出している。24%もの女子が、「そう思わない」という評価を下している。


<クラス別>

 

<男女別>

 

 


5.1.4.Q4 あなたにとってアシスタントはどういう人だったですか?(複数解答可

1.親近感の持てる  2.頼りになる  3.気軽に話せる  4.知識のある  5.面白い

6.近寄り難い、壁を感じる  7.頼りにならない  8.話がわかりにくい

 

全体的には「知識がある」が最も多く、続いて「頼りになる」が来る。面白い、と感じた人は少ないが、悪い評価を下した人も少ない。クラスAのみ「頼りになる」が最も多い。「近寄り難い、壁を感じる」「頼りにならない」という評価を下したのは全て複数クラスにまたがる女子であった。全体の傾向と反し、男子は「気軽にはなせる」が最も多いという結果となった。

 


<クラス別>

 

<男女別>

 


5.1.5.Q5 アシスタントがいることでやる気が増しましたか?

 

全体では42%の人が「そう思う」と答えており、「どちらとも言えない」が多い。A,Bはいずれも60%前後が良い評価を与えているのに反し、クラスC,D20%台に留まる。男女差はあまり見られない。意欲にはあまり影響をあたえていない様子である。

 


<クラス別>

 

<男女別>

 


5.1.6.Q6 アシスタントがいることで授業が楽しくなりましたか?

 

58%が「そう思う」と答えている。この質問に対してもクラスA,B7080%と評価が高い。男女差はあまりない。クラスによって評価が大きく異なった結果となり、クラスAはクラスCの二倍以上のパーセンテージで良い評価を得ている。

 


<クラス別>

 

<男女別>

 


5.1.7.Q7 今後も情報演習の授業にアシスタントがいて欲しいと思いますか?

 

全体的には77%が「そう思う」と答えており、うち24%が「強くそう思う」という好評価を得ている。クラスCをのぞく全クラスが80%近い評価を得ている。男子は19%が「どちらとも言えない」にとどまっているのに対し、女子は「そう思わない」が15%と、ネガティブな評価がある。

 


<クラス別>

 

<男女別>

 


5.1.8.Q8 昼休みや放課後に、アシスタントにいて欲しいと思いますか?

 

38%が居て欲しいと思うが、低い数値である。クラスCは特に評価が低く、44%が「思わない」と回答している。男子の方が女子より明らかに評価が良い。

 


<クラス別>

 

<男女別>

 


5.1.9.Q9 情報演習以外のことでアシスタントに相談に乗って欲しいと思いますか?

 

全体の31%が「そう思う」と答えているが、Q8.よりも更に低い値である。クラスC61%と、半数以上が否定的な回答を示している。クラスAのみ半数以上が良い評価を下している。男女の比率に関しては、女子の方がはっきりと「そう思わない」と回答している。

 


<クラス別>

 

<男女別>

 


5.1.10.Q10 アシスタントが大学生であることについてどう思いますか?

 

63%が「良い」と答えている。ネガティブな回答はほとんどないが、クラスCに若干見られる程度である。クラスCのみが「良い」という評価が半数を割る。男子の方が良い評価を下しており、「良くない」と答えている生徒は皆無である。

 


<クラス別>

 

<男女別>

 


5.2.TAに対するアンケート結果

5.2.1.Q1 あなたは教育に関する仕事をしたことがありますか?(複数解答可)

 

最も多いのが「TASA経験者」であり、「塾の講師」、「家庭教師」がそれに続く。女性はほとんどが「家庭教師」および「TASA経験者」である。「特に何も経験のない」人は皆無である。

 


5.2.2.Q2 あなた自身どの程度、コンピューターについての知識がありますか?(複数解答可)

 

多いのが「Web作成」と「ワープロ・表計算の利用」であり、ほとんどの人が使いこなせる。女性で「画像編集」が出来た人は一人しか居なかった。「画像編集」と「マシントラブル対処」、「ネットワーク構築」に関しては男女差が激しく、全ての項目において男性が上回っていた。。「コンピュータミュージックを作成できる」のはわずか一人にすぎない。

 


5.2.3.Q3 今回何故TAをやろうと思ったのですか?

 

<その他の解答>

F:高校生とふれあいたかったから

F:現在何かと問題になっている高校生が実際学校ではどういう生活をしているのか気になっていたから。 

F:教育に感心があったから

M:人に教えるのが好きだから

 

「研究と関係していた」、「面白そうだった」、の二つが大半を占める。前者は男性に多く、後者は女性に多い。男性に関しては7割近くが自分の研究と関係していた。

 


5.2.4.Q4 Q3で期待していたような成果を得られたと思いますか?

 

およそ8割が得られたと答えたが、特に男性は「強くそう思う」が7割近くを占める。全体的に成果は得られたと考える人が多い。

 


5.2.5.Q5 TAをやってみて授業の支援は難しいと思いましたか?

 

簡単と答えたのは全体で33%、難しいと答えたのが50%と、全体的には難しいという結果を残した。男性はほぼ全体比率と同じ構成なのに対し、女性は「簡単だった」が4割、「難しかった」が6割と大きく二つに分かれた。

 


5.2.6.Q6 授業中に生徒と充分にコミュニケーションがとれたと思いますか?

 

「そう思う」が44%、「そう思わない」が25%である。男女による差は見られないが、「強くそう思う」と答えたのは女性のみであった。

 


5.2.7.Q7 困っている生徒に対してわかりやすく説明できたと思いますか?

 

「そう思う」が7割近くを占める。男性は「強くそう思う」と答えた人が3割いるのに対して、女性で「強く」思う人はいない。

 


5.2.8.Q8 TAをしてみて自分自身が高校生のために役に立ったと思いますか?

 

66%が「そう思う」と答えている。女性は8割が「そう思う」と、男性より良い評価を下している。

 


5.2.9.Q9 その他あなたがTAをして成功したと思ったこと、失敗したと思ったことをお書き下さい。(記述式)

M.男性の意見 F.女性の意見)

 

F.年齢が近いということもあって、自然に触れ合えたと思う。教える、というよりも助けてあげるお姉さん、という感じだった。改善点は、もう少しアプリケーションになれていればもっとスムーズに教えられたこと。

 

F.何が成功で何が失敗かという判断は、特に目に見える結果が出ているというわけではないので、いまいち分かりにくい。しかし、生徒が行き詰まっている時にその解決方法を教えてあげると、生徒が解決できてパッとうれしそうな顔をするので、「あ、役に立ってるのかな」と思い、こちらも嬉しかった。

 

F.<成功>・十分なコミュニケーションがとれた.・万遍なくコミュニケーションできた.・生徒がわからない所がきちんと見えた.<失敗>・戸塚高校で使用しているアプリケーションへの十分な理解がなかった.(細部まで把握していなかった)・その場の質問には答えることができたが,長期的情報処理教育の流れを考えた場合,その貢献になったかどうか,不安.・何がしたいのか,どうした方がいいのか,を生徒の内側から引っ張り出してあげることができたか,不安.

 

F.関心分野につっこんであげたり、興味を持って接してあげると嬉しそうだった。

 

F.【成功したと感じた時】・生徒さんにホームページの作り方の方法が一つだけでなく、他にもあるのだよということを提案できたとき・手をあげてわからないですと言われるまで待っているのではなく、自分から「大丈夫ですか」と話しかけていくと、いろいろ聞いてくれたりしたこと【失敗したと感じた時】・ほたるの使い方をマスターしていなかったので、生徒にやり方を聞かれてもすぐに答えることができず、結局先生に聞いてしまい、私に聞いた分だけ生徒の側は時間をロスにしたのではないかと感じた時・大丈夫かな?と思いながら、なかなか声を掛けずにいたら、私が生徒さんの一番近くにいたのに、結局生徒さんが先生を呼んでしまったこと

 

M.成功:-高校でどういう情報教育が行われているかを、その問題点なども含めて知ることができた。-少しは受講生の役に立つことができ、満足感を得られた。失敗:-高校生と接する経験がそれほど豊富ではなかった自分にとって、わずか3コマで学生の中に入り込むことができたとは思えない。-戸塚高校で使っているアプリケーションに関する知識に乏しかったので、学生の質問に満足に答えたり、満足に教えることができなかった。

 

M. 生徒が何をするのかということをその生徒に聞くまでわからないのでそこで何をしようとしているのかを聞いたりすることから始まるため時間のロスがあったように思えたこと。

 

M.(成功したこと)・三週目には、気軽に声をかけえてもらえるようになった。・男子学生より、女子学生の方が物怖じせずに聞いてきたようだった。・サポートを必要としている生徒、していない生徒を見極めることが困難だが、とりあえず最初は万遍なく全員に声をかける事が重要だと思う。いずれ自然と生徒ごとにサポートしなければならない比重がわかるようになる(失敗したこと)・一部の生徒は本当にうっとおしがっていたように感じた。自力で作業に没頭したいタイプには、迷惑をかけたと思う(私もそのタイプ)。三週間という限られた時間で結果を残すためとはいえ、強引なアプローチだった。・「コンピュータが悪い」というのは、後で考えてみると禁句だったと思う。・全ての生徒を万遍なく見回った方が良いのか?もしくは、必要としている生徒のみとみっちり向き合うのが良いのか? その方向性は統一しておくべきだったのでは

 

M.3回という少ない回数でどれだけ親しくなれるか、TAとして認知してもらうかがポイントだった。そのため、かなり積極的に声をかけ、壁を取り除くことに集中した。その結果、気軽に質問してもらえるようになった点では、成功したといえる。が、一方で、そのような押しの姿勢を嫌がる生徒もいて、そちらからは不満の声も出た。時間がなかったといえばそれまでだが、そういった見極めができていなかったは失敗であった。

 

M.先生との連携がうまくとれたと思う点は、成功だった ・事前にもっと高校のPCに触れて、ソフトの特性を知っておくべきだった ・TAどうしのコミュニケーションが少なかった点が失敗だったと思う

 

M.【成功】難しいことを分かりやすく説明できたこと。学校じゃ教えない小技を教え感謝されたこと 【失敗】たとえば生徒がレポートの内容を考えるときに相談に乗ってあげれば良かった

 


5.2.10.Q10 TAをやることであなた自身が学んだことをお書き下さい(記述式)

M.男性の意見 F.女性の意見)

 

F.コンピュータが学校の授業に大きくかかわっていくようになるという未来像が今回のTAを通してみれたこと。 情報処理の授業だけではなく物理の授業の演習も見れたのは非常によかった。

 

F.人にものを教える、難しさ、興味を持ってもらうことの難しさを、痛感した。

 

F.・高校生レベルを対象とした情報処理教育とはいかなるものなのか,イメージとして掴むことができた.・高校生の目で今与えられている課題を考えることを体験した.・どういう言葉を使って,どういう態度で,どういう雰囲気で接っし,教えていけばよいのか,わかった.

 

F.技術的支援の方が必要とされていると思う。話し相手を高校生が求めているとは思わなかった。

 

F.・教えることが傍目からみているよりもずっとずっと大変なことなのだと改めて実感した。・ホームページはつくれるから教えられるかと言えば、自分がつくれることと教えるということは全く違うということ。生徒さんから自分が使ったこともないような内容の質問をされるとどうしていいのかわからなくなったり、自分の事前の勉強不足を感じた。・だが全く知らない機能などを学ぶこともできた・自分からいかないと、どうにも意味がないということをいたいほど感じた

 

M. 上述したように、まず、高校でどういう情報教育が行われているかを実地で学んだことが、一番の収穫だったと思う。

 

M. SFCでは学生の側から質問してこないと対応することは少ないが高校ではこちらから質問していくと以外といろいろなことを聞いてくることがわかりこちらの側からの積極的なアプローチも必要であることがわかった。

 

M.アプローチに関しては、高校生相手でも、大学生相手でも、社会人相手でも、教えることが技術的な事に終始している限り全く変わらないと思った。高校生だから〜しなければならない、とこちらが構えていては逆に垣根を作る結果となることがよくわかった。

 

M.一部を除いて、現在の高校生(一つの高校だけ見てそこまで判断できるかは疑問だが)が、コンピュータに対して、楽しいと思う反面、未知の領域、不可解なものとして捉えているということがわかった。また、現時点では、情報教育といった場合、あくまでもアプリケーションの使い方の域を脱するものではなく、情報とは何かといった本質的な領域にまで踏み込んではない、模索段階であるということが解った。

 

M.「教育」の難しさ。大学のTAと高校のTAの状況があまりにも違うこと

 

M.今回のTAの成果は、「教えるためには自分自身を磨かなければならない」ということを、肌で感じたことだった

 

M.教えるという事の難しさを感じ、意識が変わった


5.2.11.Q11 今後TAが「情報」の授業に必要だと思いますか?

83%が「そう思う」と答えている。特に男性は86%が「強くそう思う」と答えており、非常に高い割合を占めている。

 


5.2.12.Q12 TAはどのような役割が良いと思いますか?(複数解答可)

<その他の意見>

F.進度の特に遅い生徒のバックアップ

F.進度の遅い生徒のサポート・学校の先生のTAWEB制作を教える先生がWEBの作り方を知らないことがあるので、まずは先生のサポートをして上げることも必要だなと思った)

M.ほとんど全て選んだが、SFCのSAとしては、この中で5以外のことをやっていまることをふまえてのことである。5に関して、高校ではTAの方が先生たちより専門知識を持っている場合は、あり得ると思う

M.現在の「学校の教師」と「塾の講師」と「生徒」関係が望ましいと思う。TAは塾の講師として技術的な側面の指導に徹し、教師が体系的な「情報」の知識を伝えるのが健全な体制である。上記の関係と異なるのは、その分担作業を教師と講師が綿密に相談する点にある。7.の授業以外での相談相手として大学生が当たるのには、どうかと思う。あまり歳の変わらない大学生が、相談相手として後々責任がとれるのであろうか

M.TAという役割からは外れるのかもしれないが、極端な話、きちんとした採用基準を設けて、学生が教えるということがあってもよいのではないだろうか。

 

 

最も多かったのが、「生徒に操作を教える」という項目である。男性は「授業以外での相談相手」という項目以外は、どれにも回答している。女性は男性に比べ、「授業内容検討のサポート」という項目にあまり重点をおいていない。

 


5.2.13.Q13 TAはどの程度コンピューターに関する知識を持っているべきだと思いますか?(記述式)

M.男性の意見 F.女性の意見)

 

F.情報処理IS で習うようなコンピュータ全般のことと、授業補佐をするのだから、基本のアプリケーションの知識はもとより、授業で用いるアプリケーションの基本操作を知っているべき。あとは、HTMLのタグの知識など。

 

F.当日の授業で扱うホームページ作成ソフトについての事前学習などは必要であると感じた。それ以外でももちろん知識が豊富であればあるほど良いに越したことはない。しかし、SFCで普通に情報処理の授業を受けていれば最低でも何らかの対応はできると思う。

 

F.「教える」という行為をするからには,それに関して完全に把握していることがまず,大前提.そして,それをどう教えたらいいのか,どうしたら理解が深まるか,そしてその先に発展させていく力をどう身につけたら良いのかを,考え,理解し,実践できる力も大切.TAを「アシスタント」として捉えるならば,そこまで厳密である必要はない.ただ単純に操作方法をアドバイスするだけなら,特に,である.

 

F.あればあるほどよい。

 

F.・最低限授業ないで使用するソフトについてはあらかじめなんでもできるようになるくらい勉強してから望むべきだと思う・生徒さんの知的好奇心に対処できるくらいないとTAとして生徒さんに「なーーんだこんなもんか」とおもわれてしまったりするのではないかと思ったので、技術力や知識はあればあるだけいいと思う。

 

M. 基本的な操作方法は知っていることが望ましいと思う。授業時間が限られているので、生徒に質問をされたとき、TAが右往左往していたのでは時間が無駄になる。少し難しい操作方法に関しては、調べるためのポインタを持っていることが望ましいと思う。たとえば、SFCでは、SA・TA全員にCNSガイドが支給されている。自分が知らないことを聞かれても、これを調べて答えることができる場合もある。また、私はJavaのAPIを全て覚えているわけではないが、生徒から質問されれば私がAPIドキュメントを調べて教えることはできる。 わからない知識を調べるプロセスを教えるのが本当は望ましいが、入門者の段階では、自力で調べるのは相当大変なことで、やはり何らかの手ほどきが必要だと思われる。そして、それをやるためには、TAが相応の知識を持っている必要がある。 ただコンピュータの知識を持っているだけではなく、授業で何を教えるのが目的か、何がねらいか、ということも理解している必要がある。たとえば、プレゼンテーションツールの授業では、ツールの使い方以上に、コンテンツの作り方が重要かもしれない。この部分では、先生の果たす役割が大きいと思うが、TAも全く知らないというわけにはいかないだろう。

 

M. そこで使うことになるソフトの一通りの使い方がわかる程度の知識

 

M.最低限、SFCレベルは必要だと思う。全国レベルでSFCの学生のコンピュータスキルはかなり高いのであるが、私が高校生であれば知識を伴わないTAは必要としない。情報処理2種のような国家資格という「品質保証」は持っていた方が良い。

 

M. 当然、高校で教えられることになる情報科の内容程度は理解していなければならない。

 

M.基本的なことだけでよい。コンピュータ教育を一度でも受けたことのある学生。

 

M.教える内容にもよるが、HPの作り方、透過GIFなど画像に関する基礎知識、PC用語の意味など、特に用語の意味が分からないと、対処の仕方も分からないので、重要だと思う。あと、「どう教えるか」ということを事前に検討しておくことも大切かと思う。

 

M.授業で教える内容についての知識はもちろんのこと、実はコンピューター以外にもプレゼンテーション等幅広い知識が必要

 


5.2.14.Q14 TAの報酬は何が適切ですか?(複数解答可)

<その他の意見>

F.情報処理教職の実践研修

M.情報科教員免許

M.薄謝、もしくはコンビニのバイト代くらい

 

「給料」と「交通費」が高い。次に高いのが「職業経験として履歴書に書ける」である。女性は「大学の授業単位として認めて欲しい」という意見が男性に比べて多い。「何もしなくていい」という意見は男性にのみ見られた。

 


5.2.15.Q15 その他、思ったことを自由にお書き下さい。(記述式)

M.男性の意見 F.女性の意見)

 

F.学期間を通してやっていけるシステムが確立したら、高校生にとっても大学生のなまの声を聞けるよい機会だと思うので、もっとこういう交流の制度がある学校だけ、というより一般的に広がっていったらおもしろいと思う。

 

F.「アシスタント」というのは立場としてとても難しいと感じた。コンピュータの操作等の技術面だけでなく、その内容や構成なんかもこうしたらいいのじゃないか、というアドバイスなどをしてあげたいと思う部分も大いにあったが、それをすることで授業進行の妨げになってしまわないか、など思うとなかなか積極的になれない場面もあり、また生徒が技術面での問題がひとまずなくなって落ち着いて内容を練る段階のときなどは、下手に声をかけても邪魔してしまいそうなどということも思い、様子見の時間が多くなってしまう時もあった。そういう意味でTAというのがどれくらい口を出していいのか、微妙な感じがした。また、その感覚がつかめるようになるにはもっと長期間この実験を続ける必要があった。あと、数週間続けると、顔馴染みにもなり、よりコミュニケーションを図りやすくなっただろうと思う。

 

F.技術力がある人であればあるだけいいと思う。継続的に行くのであればまた状況が変わってくるかも知れないが、話し相手と行っても数回行くだけということを考えると技術的な事を教えて、生徒の関心を引き付けることの方が生徒は喜んでいたと思う。また、話し相手を考えるのであれば、情報処理のTAと言う形を取るのではなく交流会みたいなものを開く方がいいのではないかと思う。

 

M. 12月1日の研究授業後のミーティングで、ある先生(教育委員会か文部省の人だったかも)が「生徒たちが熱心に楽しくやっているからといって、情報教育がうまくいっていると錯覚してはいけない。本当に教えるべきことが理解されているかどうかはわからない」というような意味のことをおっしゃったのが印象に残っている。今はまだ試行錯誤の段階だから、楽しければいい、と言う程度でもいいのかもしれないが、2003年までには、きっちりとした教育効果が見えるようになっているべきだろう。しかし、先生は、使い方の指導に追われて、そこまで考えが至らないのが実情かも知れない。 TAを導入することで、使い方の指導、生徒のフォローに関する先生の仕事が減り、真の「情報教育」をする事の方に専念できるという効果があるかもしれない。

 

M. 大学よりも短い時間の中でかなりハードなスケジュールで行っていたので本当に情報教育をするならばもう少しゆとりのあるものにしていかないと結局わからない人がたくさん出てきて意味がないようなことになってしまう。

M.生徒からのアンケートで、「頼れる」より「知識がある」に答えが大きく偏っていたのは私は逆に良い結果であったと思う。生徒が頼るのは、責任を背負っている「情報の教師」一人で良いのではないか。前述の通り、私は生徒-TA-教師の関係は生徒-塾の講師-学校の教師の関係であるべきだと思うし、生徒が学校の教師より塾の講師を信頼するようになるのはやはり何処かおかしいと思う。コンピュータの細かい操作に関する知識が「使い捨て」であるのと同じように、それを教えるTA個人個人は「使い捨て」の道具で良い。

 

M.TAとして授業に参加するという経験は実に楽しく、貴重なものであったが、一方で、まだまだ未開拓な領域であるということも痛感した。また、TAというものがどのような立場であるのか、明確になっていなかった。そのため、何が求められ、何をどこまでやっていいのかがあいまいなままであったように思える。今回のTA派遣のプロジェクトが、それを明らかにするためのものでもあるとするなら、何らかのプロトタイプを示すべきであったようにも思える。やってみたらどうかという案に対し、安直にやってみましたという流れであったことは否めない。とはいえ、それでも今回のTA派遣によって得られたもの、解ったことも多くあり、次の機会があることを大いに期待するところである。

 

M.日本ではボランティアというと無償奉仕を前提としているような認識があるが、一定の報酬がなければ、ボランティアを根付かせる事は出来ないと思う。そういう意味で、TAにも報酬は必要だと思う。

 


5.3.教員へのヒアリング調査の結果

5.3.1.教員ヒアリングの結果

 

教員については、担当の先生が4名のため、アンケートをもとにしながら、122日にヒアリングを実施した。まず、アンケートの項目に沿って質問をし、その後自由に感想を話していただいた。項目については、先生方の総意である。

 

Q1 TAがいることによって授業がしやすくなったと思いますか?

A1 強くそう思う

     単元によって異なるが、ホームページ作成のようなものでは、授業

    がとてもしやすくなった。ただ、講義メインの授業では、授業のしや

    すさとTAの有無はあまり関係してこないと思う。

 

Q2 Q1で1、2の場合、どんな点がしやすくなりましたか?

A2 画像処理など技術的な援助の際に、手が多いので多くの生徒を監督するこ

   とができた点。特に、ホームページ作成のような今回の授業の場合、

     ・個々の生徒の技術力に合わせることができる

       (関心もあって勉強もしている生徒の要望に応える。)

グループの様々な要求に応えられるだけの、技術面での広い知識を持っている。

 

Q3 生徒がとまどった時にTAはすぐに対応していましたか?

A3 そう思う

     TAにもよるが、7割が対応できていた。

     最初はぎこちなかったが、だんだん対応できるようになってきたと

    思う。ただ、一部のTAはどうすればいいのかわからない状態になって

    いたり、呼ばれなければ生徒と接しないこともあった。最初の段階で、

    先生からTAに、積極的に関わるように伝えておいた方が良かったかも

    しれない

 

Q4 TAは生徒に分かりやすく説明していたと思いますか?

A4 強くそう思う。

     問題なく説明できていた。時には教員よりうまく説明できていたの

    ではないかという状況もあった。

 

Q5 TAは生徒とうまくコミュニケーションがとれていたと思いますか?

A5 期間の前半は、「あまりそう思わない」、後半は「そう思う」

     元々、短期間でうまくコミュニケーションをとるのは難しい上に、

    基準もはっきりしない。総じて、双方(TAと生徒)とも思っていたよ

    り遠慮がちであった印象がある。

 

Q6 TAがいることによって生徒の理解は深まったと思いますか?

A6 そう思う

     Q4とも関連するが、分かりやすく説明していた分、生徒はきちんと

    理解していたと思われる

 

Q7 TAは生徒にとって身近な存在になっていたと思いますか?

A7 あまりそう思わない

     TAの個人差もあったが、総じて評価は高くない。しかしこの点は、

    TAの力量より問題はQ5でも触れた期間の短さが関係してくると思う。

    1ヶ月程度で身近になるのは、教員でも難しい。また、身近な存在にな

    っていることが、絶対的にいいのかという価値観の問題もある。コミ

    ュニケーションの問題は、現場でも難しい課題である。

 

Q8 授業の内容の検討段階からも、TAに協力して欲しいと思いますか?

A8 あまりそう思わない

     これまで考えたことのない問題である。将来的にそうなればいいが、

    現状では不可能だと思われる。授業は先生が創るものという根本的な

    価値観があり、当面は、先生方で決めた方針に沿って、授業内でのサ

    ポートに徹して欲しい。

     また、TAがどういう立場で関わっているか、にもよる。

    もし、将来教員になりたい、という人がいれば、授業内容の検討にも

    関わってもらうことになる。TAサイドが何を求めて(どんな目的で)

    参加しているか、を把握した上で、その立場に応じて情報・場所を提

    供したい。

 

Q9 今後このようなコンピュータを使う授業に、一般大学生のTAが必要だと思いますか?

A9 そう思う

     但し、TAの立場、希望などが明確に見えていることが必要である。

    つまり、TAをどのように遇するのかという待遇面(お金、態度)の問

    題があると思う。

 

Q10 どれ位の頻度で必要だと思いますか?

Q11 どの程度の期間で必要だと思いますか?

Q12 1つの授業にどれくらいの人数が必要だと思いますか?

 

A10〜A12  一概には答えられない

     期間、頻度については、難しい問題である。

     欲を言えば、通年でスタンバイしておいてもらい、必要な時に参加

    してもらう、という形がベスト。特に、1年生の最初に、ログインの仕

    方などを教えるので、その時のサポートはあると良い。また、昼休み

    や放課後も、課題のために部屋を利用する生徒がいるので、待機して

    おいてもらうと助かる。特に、現在の情報演習のカリキュラムでは、

    学期末毎に課題を出しているので、そのときに授業の手伝いをし、か

    つ放課後に図書館の司書のような形で準備室にいてくれると助かる。

     人数に関しては一回の授業に大体2〜3人程度が良い。

5.3.2.補足的なコメント

生徒の中に、「先生に教わる方が楽」という意識があるように見受けられ

 る。TAの立場について、生徒はあまり実感していないのではないか。

(先生方も)最初のうちはどう接していいのかわからなかった。当初は「サポートしてください」「生徒一人一人にいってやってください」などの要望を、気軽に言えなかった。

TAは、単にいるだけだと結局お荷物になってしまう。

TA1人1人の立場を明確にして欲しかった。TAの方々の目的が明確ならば、教員もそれに応じて対応できる。

5.3.3.来年以降や、TAの制度化について

教員個人の意見としては、来年以降も楽しく授業ができると考えている。

 しかし、将来的にTAなしで授業を行うことを考えれば、長い目で見た体

 制づくりのためには、来年はTAなしで授業をした方が、良いのかもしれ

 ない。

学校としてTAを受けいれる場合、教職員全体のコンセンサスが必要になる。TAという存在そのものの認知度が低すぎて、学校全体としてはTAを求めていないのが、現状である。

学校に外部の人が入ってくるとき、どのような肩書きを与えてどのよう

 に遇すればいいのか、全く決まっていない。また、制度的にも展望が見

 えない。(TAの資質に関する線引きの問題・TAがシフトに入れない時に

 どうするか・責任の所在をどこにするか・職員会議での説得、校長の許

 可、教育委員会への説明など)

ティームティーチングの経験のない先生もおり、自分のやり方で一人で 授業を組み立てる先生には、TAの存在を説明するのが極めて難しい。研究の一環としてTAがくるのは構わないが、これを制度の枠組みで捉える場合、相当の労力を覚悟せねばならず、その対処を現場の教員で行うのは、時間的に見て無理である。

学校組織も今は変革の時代であり、その一環としてTAが既成事実を一歩一歩積み上げなくてはならない。いきなり制度化しても、現場には浸透し得ない。

5.3.4.TAとして求められるレベル

個人的な意見として、TAといえども、生徒に接するときには教員と同等でなければならない。英語の時間に、外国人(=AET)と授業を行うときには「今日はAETを“使う”」という表現が使われるが、TAを「使う」「使わない」という捉え方はしたくない。

生徒は、教師とTAに平等に依存心を持っていなければならない。教員は、TAを同等に扱うべきであるし、TAもそういう意識と資質を持って、授業に臨まなければならない、と思う。そうした点を見定めるために、TAを選ぶ際に一定の基準が欲しい。(今回では全体としては満たしていたと思われる)

5.3.5.今回の期間の全体的な感想として

TAは非常に良くやってくれて、助かった。しかし、今回のようなものは、制度化としては現実的ではないが、責任を伴わなければ楽しくやれる。

TAと先生の間のコミュニケーションが、当初の段階ではうまく取れていなかった。お互いの模索の中で、良い信頼関係が築けたのは今回の成果だが、いつもうまく行くとは思えない。

TAが生徒とコミュニケーションをするのは、1ヶ月程度では難しいが、TAには生徒とコミュニケーションする資質が必要である。

今回は、TA11人の個性が見られなかった。自分をどう表現して行くか、がTAにも求められるのではないか。

TAどうしのコミュニケーションが、最初のうちはうまく図られていなかった。心理的なつながりをうまく作って行くことが重要だと思う。

制度化されると、TAの質はピンキリになり、様々な理由で仕方なく来るTAも出てくるかもしれない。誰が来るのかわからない心配があり、現場としては制度化には賛成しかねる。

ルールを作るよりは、信頼関係を積み上げることで成功させたい。今回

 は互いの自助努力によって成功したといえる。制度化されてうまく動け

 ば最高であるが…。

5.3.6.まとめ

TAが制度化されてうまく動けばベストだが、現在の情報科教員の意見としては、TAを制度化するのは危惧が多く、今後TAを継続するとしても、あくまでも大学の実験への協力、という形で動いて行く方を望む。

6.評価と考察

6.1.TAは、授業進行の手助けになったか

「授業進行」に関する変化を最も意識するのは教師側である。TA自身にとって、自らが参加することによる授業の変化は当然ながらわからない。生徒側も、情報という科目については授業進行を強く意識することはあまりないであろう。従って、この項目に関しては教師側ヒアリングをもとに分析・考察を加えていくものとする。

まず、Q1から検証していく。質問は「TAがいることによって授業がしやすくなったか」という教師個人個人の負荷に関わるものである。教師側の負荷が減れば、授業進行の上でも余裕が生まれ、生徒の理解を深める事が出来る。質問に対する回答は「強くそう思う」というものであった。具体的には、「ホームページ作成のようなものでは、授業がとてもしやすくなった。ただ、講義メインの授業では、授業のしやすさとTAの有無はあまり関係してこないと思う。」と書かれている。今回、TAが派遣された授業は、生徒がグループにわかれてホームページを作成するという、いわば全てのタスクに教師の目が届きにくい、生徒の意志に任せたクリエイティブな作業であった。このようなグループワークにおいてのTAの必要性は、教師側も認めるところである。個々の質問に共通性がないので、一人の教師が全てに対応することはほぼ不可能に近いからである。

後半の「講義メインの授業では、授業のしやすさとTAの有無はあまり関係してこない」という点については、教師側、TA側、生徒側にも異論はないであろう。講義メインの授業とは従来学校でとられてきた形式の授業形態であり、教師1人に生徒40人の講義形式という完成されたシステムにTAの介在する余地はない、という考えを持つ教師は多いと思われる。慶應義塾大学・湘南藤沢キャンパス(以下、SFC)においてもその傾向は見られるものの、細部における認識は異なっているように思える。つまり、SFCにおいては講義メインの授業でもTAは大きな役割を担っているケースがある。たとえば配布物の作成に携わったり、教師の不在時には講義を引き受けたり、メールやホームページを用いてインターネットから授業を支援する、などもTAの重要な役割として挙げられる。たとえ授業がホームページ作成のような実習の意味合いの強い授業ではなく、講義の場合でもSFCの場合はTAも積極的に授業進行を手助けしていくケースが多い。これほどの支援を高校の教師が要求するかは定かではないが、ヒアリングの結果を見る限りはその傾向は無いと言えるであろう。

教師ヒアリングのQ2は、授業がしやすくなった具体的なポイントについての質問である。「画像処理など技術的な援助の際に、手が多いので多くの生徒を監督することができた点」という回答だが、具体的には「個々の生徒の技術力に合わせることが出来る」点を教師側は評価している。つまり、生徒の中にはコンピュータに関心があり自主的に勉強を進めているものもいる。これは他の教科にも同じケースが考えられるのだが、「情報」の教科が施行されても、情報を教える教師がこれら生徒の質問に答えていくのは難しい。生徒の中にはコンピュータの操作に関して教師より知識のある生徒もいる。そのようなケースでTAが生徒一人一人に適切なアドバイスを与えられる点を教師は評価しているのではないか。

では、TA側は自ら授業の進行においてどのような役割を背負っていると考えているのであろうか。TA側アンケートのQ12は、「TAはどのような役割が良いと思いますか」というものであるが、これに対する回答として最も多いのが「生徒に操作を教える」であり、TA自身も自らが技術的なサポートによって授業をスムーズに進めていくことをTAの仕事として最も重要なものであると認識していると見て取れる。また、それに続くのは「教師に代わる質問の窓口」「生徒の課題作成等の支援」「進度のはやい生徒のサポート」である。進度のはやい生徒に対して適切なサポートが出来るという点にTA自身、重要な役割として位置づけているところは注目すべき点であろう。

以上のように、TAが介在することによって授業の進行がスムーズになるという事に関しては教師側も異論はないが、授業の形態によっては必要ではない、という意見に関しては考慮すべき点が多い。授業進行が技術的な質問によって妨げられるというケースはTAの支援によって明らかに減り、先生の負担も減ったものの、今回の実験の結果としては、TAの役割として教師側が認識しているのは、ここまでのレベル(技術的支援としてのTA)までと思われる。

 


6.2.「生徒の支援」の役割をきちんと果たせたか

TAによる生徒への支援の評価材料として用いるのは、生徒へのアンケートにおけるQ1Q2Q3、そしてTAへのアンケートにおけるQ6Q7Q8である。生徒へのアンケートのQ1Q3までは、TAが介在することによる授業の変化と直接的なTAに対する評価に関する質問である。TAへのアンケートのQ6Q8は、TA側から見た自己評価であり、生徒へのアンケートと比較してみることにより、TAと生徒の認識の違いが明確になるであろう。それを用いて、TAが果たして授業においてその役割を果たすことが出来たのかを検証していく。

最初に、生徒へのアンケートを見ていく。Q1.の質問は、「アシスタントはすぐ対処しましたか」という質問である。これに対する生徒の答えは、24%が「強くそう思う」、62%が「そう思う」であり、対処の早さという点では良い評価を得ていると言えるであろう。実際の授業では、積極的にTAに助けを求める生徒は希で、積極的に生徒にアプローチしていこうという方針がTA側でも徹底されていた事が、評価に結びついたと考えられる。TA側アンケートQ6.「生徒と十分にコミュニケーションはとれましたか」という質問対して、TA25%が「あまりそう思わない」と答えているものの、三日間という限られた時間でコミュニケーションをとるのは非常に難しいことであり、むしろ44%TAが「そう思う」「強くそう思う」と答えていたことを評価すべきであろう。今回は自発的に参加を希望した大学生をTAとして高校に派遣したわけであるが、この二つの質問に対する結果はその成果が出ているとしても良いのではないか。

これは生徒へのアンケート結果全体に言えることだが、女子の回答は男子の回答に比べて明らかに辛い評価を下している。この結果の原因については不明であるが、これに関しては後述する。次にQ2.の質問、「アシスタントは分かりやすいですか」というものであるが、これに関しては若干Q1.より低い評価にとどまっている。興味深いのは男子に関してはQ1.Q2.も「強くそう思う」「そう思う」と答えた生徒は90%以上と、同じように高い水準を保っているのに対して、女子はQ1.に関しては82%Q2になると70%まで落ち込むのである。これはQ3.「授業内容は理解しやすくなりましたか」についても同様の結果が見られる。

女子の評価がかならず男子のそれを下回る、というのはどういうことか。TAの男女比率は女性5、男性7であったことから、女性TAが足りず、女子へのサポートが足りなかったという仮説は棄却される。他に原因として考えられる事は、「授業の対象がコンピュータである」という事しか浮かばない。授業の中で、男子の中には、先生やTAのサポートなしに、かなり高度な作品を作りあげる才能を持っていた生徒がクラスに何人かはいた。つまり、コンピュータへの習熟という側面においては、平均的には男子が女子を上回っているという仮説を立てることが出来るのである。既にコンピュータを使える生徒がTAに対して、少なくとも「ネガティブな評価」をつける事はあまりないであろう。逆にコンピュータがあまり使えない生徒にしてみれば、生徒の能力差がわからずクラスを万遍なく見回っているTAに対して、サポートが足りないという評価を下す可能性は十分に考えられる。若干危険な仮説だが、「コンピュータの出来る生徒には男子生徒が多い」「コンピュータの出来ない生徒には女子生徒が多い」という仮説が成り立つとすれば、男子学生より女子学生の方が評価が辛い、という結果の一因として考えられるのではないか。ちなみにTA側アンケートQ7.「困っている生徒に分かりやすく説明できたか」は、上記の質問に対応するものとなっているが、25%TAは自分が分かりやすく説明できた、とは考えていないようである。しかし、生徒側から提示された結果と比較すると、TA自身が思っていたよりも生徒の方はしっかりと理解していた事がわかる。

Q3は、「TAが介在したことによって支援効果はあったか」という命題に対する重要な鍵となる質問である。内容は「授業内容は理解しやすくなりましたか」というこの質問に対して、全体での答えは「強くそう思う」が24%、「そう思う」が46%である。合計70%とう数字を低いと見るか、高いと見るかは微妙な所だが、むしろ重要な点は、「あまりそう思わない」が「どちらとも言えない」という答えを上回り、16%も存在しているという事実である。Q1Q2も、「思わない」というネガティブな回答はパーセンテージに直すと一桁であり、その他は「どちらとも言えない」というものであった。この「あまりそう思わない」と答えた16%という数字は、男子にも女子にも見られ、男子に関しては9%、女子に関しては21%もの生徒が答えている。クラスによって大きな偏りがあるか、というとけっしてそうではなく、どのクラスにも「あまりそう思わない」と答えている生徒は必ずいる。サンプルCに至っては28%という高い数値を示している。全体の16%の生徒にとっては、TAが来ても来なくても授業内容は相変わらず理解できない、ということなのである。たとえTAがすぐに駆けつけてわかりやすく説明したつもりでも、授業の本質的な部分を理解していない、ということである。

このデータをもって結論を出す前に、TA側アンケートを検証する。Q5の質問は、「TAとしての授業の支援は難しかったか」という内容のものであるが、これは先程の生徒側アンケートQ3.の結果を如実にあらわしており、実に半数の人が「難しかった」「とても難しかった」と答えており、TA側も困難な局面を自覚していたことがわかる。その結果が如実に生徒側からのフィードバックとして反映されている。果たしてTAは、生徒の支援という目的を達成できたのであろうか。それは、「生徒の支援」とは何か、という疑問に答えることによって導き出されるかも知れない。三日間におけるTAの仕事のほとんどは、アプリケーションの操作の説明という基本的なサポートに従事することで全てを費やしてきた。たとえば教師がhtmlのハイパーリンクについて説明しても、TAはそれをさらに平易な表現で説明するよりも、実際にホームページ作成ソフトのメニューからリンクというコマンドを探し出して、それを生徒に教えるという作業に忙殺されていた。生徒もそれをよく理解しており、今回の実験の中でTAは、わかりやすく「操作」を説明することに力を割いた(生徒側アンケート・Q2)ことに関しては納得しているが、授業内容についてかみ砕いて説明するような存在としてのTAは発見できなかった、という事なのであろう。

以上の考察をもって下すことの出来る結論は、TAは生徒を操作面で支援する事は出来たが、授業の内容に関わって生徒の体系的な情報処理への理解を深めるための支援は行えなかった、という事である。それを如実に表しているのが生徒側アンケートのQ3であった。もしTAが授業内容の理解まで支援するのであれば、教師の組むカリキュラムを深く理解し、綿密な議論と前準備を積み重ねていくということが必要になってくるのであろうが、それについては今回の実験では時間的・空間的制限から無理であった。支援は、あくまで技術的な側面でのみ行われたということであり、それをもってTAの本質とするのであれば支援は成功したとも言えるし、もっとTAが深く授業内容に関わるべきだという意見に従えば、失敗したと断言しても良いのではないか。


6.3.TAはどこまで貢献すべきか

三週間という実験期間の中で、TAの役割は技術的なサポートに全てを費やされた。これをもってTAの役割であり、生徒の技術的な質問に受け答えするのがその仕事の全てとすべきであるのか。それがTAの仕事の大部分を占める事になるのは間違いないが、教師側は、生徒側はTAに対してどこまでを求めているのであろうか。また、TA側も今回の実験を通じて、TAとしてどこまで学校に貢献できると考えているのであろうか。それをアンケートやヒアリングから明らかにしていく。

生徒側アンケートの中で、その質問に直接答えているのがQ8,Q9である。Q8.は「昼休みや放課後にも居て欲しいですか」という質問である。昼休みや放課後とはいわば教師の目の届かない所で作業をする生徒へのサポートという狭い意味での解釈と、コンピュータ以外の相談に乗れるような対象として存在するという広い意味での解釈があるが、後者についてはQ9.「授業以外で相談にのってほしいか」という質問に譲るところが大きいので、ここでは前者の、授業以外でのコンピュータに関するサポートという意味合いにとらえるのが正しいと思われる。さて、その内容であるが、「強くそう思う」が9%、「そう思う」が29%となっている。最も多いのが「どちらとも言えない」で42%、否定的な意見としての「あまりそう思わない」が13%、「そう思わない」が7%となっている。この結果の解釈だが、全体的に良い回答を示している生徒の38%という数値は、けっして高いとは言えない。全体から見る限り、生徒は昼休みや放課後などといった時間にTAが居る光景を想像しづらい、という結果を見て取ることができる。男女差に関しては明らかな傾向が見られるが、他の結果と同様、女子の方が男子よりも厳しい評価を下している。男子は47%が肯定的な答えであるのに対して、女子は30%と明らかに低い。否定的な意見に関しても女子の方が多い。昼休みや放課後に居て欲しいか否か、という質問に対して、男子の場合はどちらかというと居た方がよい、という傾向が見て取れるが、女子の場合は賛否両論、といったところであろう。いずれにせよ、昼休みや放課後の作業を手伝う存在としてのTAは、生徒は想定していないというのが本当のところであろう。実際のTAというシステムの運用において昼休みや放課後にサポートのために学校に残る、という体制は果たして現実的であろうか。その詳細な検証については第7章で項を割くことになるが、これは授業内におけるTAという存在が確立してからの、次の段階としてのものであろう。

さて、Q9であるが、質問内容は「授業以外で相談に乗って欲しいですか」というものであるが、これに対する生徒側の反応はQ8と同様に芳しくない。「強くそう思う」と考えている生徒は6%、「そう思う」という生徒は24%で、肯定的な意見の生徒は30%と大変少ない。否定的な意見は「あまりそう思わない」が15%21%もの生徒は「そう思わない」と回答している。つまり、否定的な」意見が肯定的な意見を上回るのである。これは他のアンケートには見られない結果である。では逆にTA側は、自らが生徒の相談相手として位置づけられることに関してはどのような意識があるのであろうか。TA側アンケートのQ12の質問、「TAはどのような役割が良いと思いますか」がそれに答えている。選択肢としては「教師に代わる質問の窓口」「生徒に操作を教える」「マシントラブルへの対処」「生徒の課題作成等の支援」という、技術面からのサポートとしての回答の他に、「授業以外での相談相手」もあり、これにYESと答えたTA3人。全体の約1/3である。内訳は男子が2名、女子が1名である。アンケート結果ではTA側も生徒側も、授業を越えた場面での関係を求めていないことが明らかとなった。高校生が大学生に対して行う、授業以外での相談となると、進路についての相談や大学についての質問などがあると思うのだが、このような質問や相談に対して、果たしてTAが的確な応対が出来るかどうかは疑問であり、やや大袈裟に言えば生徒に対するカウンセリングまでをTAの役割として含めるのは、TAという存在への拡大解釈ともとれる。

以上はTAと生徒が授業という枠を越えて接する場合の検証だが、学校に対するTAの役割を考える際に重要なる点としてもう一つあげられるのは、TAによる授業の計画面における支援である。今回の実験ではTAの役割は授業における技術的なサポートに終始したが、TAが授業の内容の検討段階から関わって教師をサポートするという方法も考えられる。これに関して教師側は、TAの協力に対して積極的に肯定するコメントを残していない。教師側ヒアリングQ8になるが教師側としては「将来的にそうなればいいが、現状では不可能だと思われる」としている。その原因として、今回の実験においてはTAの定義付けが曖昧であり、教師側としてもTAがどのような立場で関わってくるか判断がつかなかったため、「これまで考えたことのない問題」として明確な答えを出すことの出来ない状況を明らかにしている。「授業は先生が作る者という根本的な価値観」という従来の高校のあり方が、TAの多角的な支援および貢献に対して消極的な理由と言えるであろう。しかし、TA側は授業計画に参加していくことに対してはむしろ積極的であるように思える。TA側アンケートのQ12TAはどのような役割がよいか」という質問に対して、全体では6人のTAが「授業内容検討のサポートをすべき」と答えているのである。だが、そのほとんどは男性の意見であり、女性は1人しか肯定していない。これをどう判断するかは難しいが、TA側アンケートQ3「今回TAをやろうとしたのは何故ですか」という質問に対して男性側は「情報教育を研究テーマとしている」人が多く、そのためにTAがもっと積極的に学校に対してアプローチすべきであると考える人がいたのが、男女の意識の違いとなって表れていると分析することも可能である。いずれにせよ、教師側と男性TA側との意識の差は大きいものがあり、現実にはTAが授業計画の段階から積極的に関わっていくのは難しいといえよう。

TAはどこまで貢献すべきか、という表題に対する答えとして最も的確なのは、「授業時間を超えてのTAの存在意義は、現場においてはほとんど考えられていない」といった、やや否定的な結論であろう。生徒にとっても、教師にとっても授業時間外でTAが貢献すべきことはない、という認識がある事は明らかなのである。


6.4.TAはどう実施するのが良いのか

ここで行うのは、データによって検証可能な範囲の中での、TAの実施における施策的な課題について検証していく。「大学生のTA」が高校という教育現場で支援を続けるためには、どのような前提条件のもとで進めるべきなのか、また生徒や教師が大学生のTAに持つ意識はどのようなものなのか、そしてTA自身がTAを行うにあたってどのような事を求めているかを、アンケートのデータを元に分析する。

 最初に、大学生が高校に来てアシスタントとして働くという事について生徒はどのように考えているのかを調べる。生徒アンケートQ10「アシスタントが大学生であることはどう思いますか」という質問である。TAはけっして大学生でなくてはいけない、という訳ではない。社会人として学校でコンピュータの学習支援を行っている人もいる。むろん、自分たちの同級生もTAとして働く事は可能である。誰がTAをするのが理想的であるか、という質問に対して明確な答えを出すことは非常に難しい。社会人のTAであればいかに効率的に教えられるかという訓練を受けている事が多く、学生のTAのように躊躇する事もなく、生徒も安心して質問できるであろう。大学生の場合は生徒にとって「お兄さん、お姉さん」として接する事が可能で、TAとしての技術的な支援の他にも様々な効果が期待することが出来る。また、信頼関係を築くことが可能ならば、社会人のTAよりも気軽に話しかけることができるかもしれない。そして生徒によるTA、たとえば学校内の先輩がTAを務める場合などは、自分たちとほとんど変わらない歳のTAということで、生徒と教師、そしてTAの三者が非常に容易に教室内で溶け込める環境を築くことができるであろう。

 さて、そのアンケート結果であるが、63%の生徒が肯定的な評価を下している。否定的な評価は3%に過ぎない。具体的なコメントもあり、肯定的な回答からは「同じ学生さんという立場だし、年が近いからはなしやすいから」「年齢が近いから親近感をもった。」「あまり大学生ぽさをかんじさせないところ」というコメントを得た。しかし、「どちらとも言えない」と答えた生徒も32%おり、そのコメントも「大学生はこわい」「もっとフレンドリーな人または知り合いの人が来てくれたらたのしい」「大学生であってもなくても関係ないと思うのですが…」と様々である。肯定的な意見の生徒に共通しているのは、やはり歳が離れていないので話しやすい、という事である。これは大学生のTAが高校という現場において、大学生であるという事に対しての良い効果が現れている結果と言えよう。TA側が生徒に対してアプローチする場合は、生徒側がこのような意識をもっていることを十分理解した上で、積極的に支援していくべきである。

 教師側から見た大学生TAの認識に関しては、大学生であるが故の、導入までの前提条件の不明瞭さに戸惑いを感じさせる回答が教師ヒアリングに見られる。Q9「今後このようなコンピュータを使う授業に、一般大学生のTAが必要だと思いますか」という質問に対して、教師側は「そう思う」と肯定はしているものの、「TAをどのように遇するのかという待遇面(お金、態度)の問題があると思う」としており、高校側が大学生TAを実際に受け入れていくためには、むしろTA側である程度まとまりのある要求を教師側に提示していく事が必要だと思われる。今回は基本的に授業を行う教師の指示に全て従う、という姿勢がTA側に見られたが、現実にはむしろTAも率先して教師側に対して「我々をこう遇して欲しい」「我々はこのようにサポートするので、先生はこうして欲しい」という具体的な提案をしていくべきであろう。ただ、大学生TAは教師にとっては「責任はないが、そのかわり融通の利くアシスタント」という認識があるので、その点をTA側も積極的にアピールすべきかもしれない。以上がTA実施において、生徒側と教師側の認識とそれに対するTA側のアプローチに関する分析である。

 次に、TA自身が自らに、そして学校側に対して要求する項目である。TAとして現場に派遣されるために、どの程度の質を自らに求めるのであろうか。その答えとなるのがTA側アンケートQ13TAはどの程度コンピュータに関する知識を持っているべきだと思いますか?」である。この質問は自由記述だが、今回の実験はhtml作成という授業内容の支援だったため、技術的なレベルでは「コンピュータ全般のことと、授業補佐をするのだから、基本のアプリケーションの知識はもとより、授業で用いるアプリケーションの基本操作を知っているべき。あとは、HTMLのタグの知識など。」という意見が多い。また、「あればあるほどよい。」「生徒さんの知的好奇心に対処できるくらいないとTAとして生徒さんに(なーーんだこんなもんか)とおもわれてしまったりするのではないかと思ったので、技術力や知識はあればあるだけいいと思う。」という意見もあった。あればあるだけいい、というのは理想であるが、現実問題として大学生TAは知識においてそれを職業としている社会人に到底及ぶところではない。むしろ、最低ラインをどのように設けるべきかが問題となる。これに対する回答としては「基本的なことだけでよい。コンピュータ教育を一度でも受けたことのある学生。」という極端な意見も見られた。これについては異論も多いと思われるが、現実に大学生TAがシステムとして稼働すれば、TAのレベルに対してあまり厳しい要求は出来ないのかもしれない。そのほかにも「ただコンピュータの知識を持っているだけではなく、授業で何を教えるのが目的か、何がねらいか、ということも理解している必要がある。」「授業で教える内容についての知識はもちろんのこと、実はコンピュータ以外にもプレゼンテーション等幅広い知識が必要」という意見もあり、授業の進行における教師側との協調を積極的に進めていこうという考えも存在している。これらコメントから得られるTAが自らに求める条件は、厳しいものであるという事がわかる。大学生TAというシステムを試行した際には、今回の実験に参加したTAのスキルを求めていくことは多くの困難を伴う。重要なのは、今後TAを生み出していくためにどのようなシステムを必要とすべきか、という点につきる。前述のような「コンピュータ教育を一度でも受けたことのある」、一度しか受けたことのない人をTAとして派遣するにあたり、どのような組織やシステムが、そして受け入れ態勢が必要なのかは今後検討の余地がある。

 最後に、TAが受け入れ側もしくは派遣元に要求すべき報酬の問題がある。TA側アンケートQ.14TAの報酬は何が適切か」という質問に対し、そのほとんどが「給料」「交通費」をあげている。給料の額についてのコメントもあり、「薄謝、もしくはコンビニのバイト代くらい」の額で良い、という控えめなものである。一方、このような意見もある。「日本ではボランティアというと無償奉仕を前提としているような認識があるが、一定の報酬がなければ、ボランティアを根付かせる事は出来ないと思う。そういう意味で、TAにも報酬は必要だと思う。」共通した見解として、TAというシステムを維持するという意味でも、また今回TAとして現地に派遣されて実際に作業をしてみた個人的な実感としても、TAにある程度の金銭的な報酬は必要であろうという意見がほとんどであった。そして、これは主に女性からの意見が多いのだが、「大学の授業単位として認められるべき」「職業経験として履歴書に書ける」という制度的な報酬を求める声もあった。前者の授業単位とTA制度の関係は非常にデリケートな問題をはらんでおり、大学生にとってTA制度を「単位目当て」という位置づけだけには絶対にしてはならないという危惧は教師側にもTA側にもある一方、TAへの継続した供給を大学に求めるためには単位を絡めた制度作りもやむを得ないという実利から敢えて「大学の授業単位とする」という意見を残したTAもいる。後者の「職業経験として履歴書に書ける」はその履歴書を受け取る企業側がTAの社会的認知度と絡めて判断するものであり、これはTAという制度が成功するか否かによって付加価値的に生じる報酬であり、前者とは分けて考える必要がある。金銭と単位というこの二つの報酬はTA制度を維持するために非常に重要な意味合いを持つ結果となるのであろうが、さらなる考察に関しては次章に譲る。

7.今後の展開に向けて

この章では、前章での評価・考察を踏まえて、今後TAが授業支援活動を行う際に検討を要する課題を抽出するとともに、TA活動の報酬面と実施形態について、我々からのコメントを提示する。

7.1.今後TAをする上での検討課題

7.1.1.TAによる先生自身への支援

2003年から高校で「情報」教科が始まるにあたり、即席の教員が毎年3000人ずつ育成される。その混乱を緩和するために、TAが先生を支援することは可能であるかを探るのが今回の目的の1つであった。

さて、今回支援した戸塚高校の「情報演習」授業は、英語科1名、国語科1名、理科実習教員1名、実習教員1名の計4人によるティームティーチング方式で運営されている。そのなかで、パソコンに詳しい先生はいたが、まだパソコンとはどういうものかを模索している先生もいた。詳しい先生でも、近年の技術革新の早さに手を焼いている状況であった。やはり、先生よりもTAの方が「コンピュータの知識」という点において、若干高い能力をもっていたといえる。(すべてのTAがというわけではなかった。)

そういった状況の中、授業中に先生が(その授業の内容面で)TAに助けられることがあったかというと、今回そういったことはなかったといえる。一部で生徒の難しい質問に対して、先生がTAを呼んだということがあったが、授業全体において、先生はTAを頼ろうとはしないし、TAもそこまでしようとは思っていない。

そんななかで、授業時間外に先生がTAに操作を教わるという光景が見られた。教わった先生はとても喜んでいた。先生は学校で教わる機会がない(できる先生に教わるとしても教える先生はとても忙しい)ため、そうした細かいテクニックを学ぶ機会として、TAの支援は有効になるであろう。

しかし、そうした支援の有効性も、先生の性格によって左右される。TAに教わることを積極的に受け入れる先生と、どうしても受け入れられない先生がいる。これは、まだTAが学校での認知が低く、先生はTAが何をしてくれるのかがまだ見えていないことにも起因していると考えられる。わからないことをTAに教わることが常識になれば、受け入れられない先生も減ってくるだろうから、そのような状況になれば支援の効果も期待できるかもしれない。

 

7.1.2.TAの実施期間、頻度、人数

今回の実験での期間は3週間であった。プロの教師でも1ヶ月程度で生徒との信頼関係を築くのは難しいらしく、今回の状況はTAにとって少々難しいケースだったかもしれない。

1週目はTA、先生、そして生徒もどのようにコミュニケーションをとったらよいかわからず、支援と言うよりも、逆に混乱をさせていた様子であった。2週目は皆ペースを取り戻し、TAの動きも格段によくなった。先生達も、とても助かっていると口に出すようになった。3週目には生徒とうち解けてきて、生徒との信頼関係も徐々にできつつあった。しかし、まだ生徒から積極的にTAに質問していくという環境にはならなかった。これは高校生自身が積極的に質問する行動が苦手なのか、それともまだ時間が足りなかったのか、原因は今回わからなかったが、いずれにせよ、よりよい支援をするためには生徒との信頼関係を築くことが重要で、それを築くのにはある程度の時間が必要だといえよう。

また、TA支援した学生の中に、すでにできあがっているクラスに入っていくのはとても難しいという意見があった。それゆえ、授業の立ち上げ時の3週間だとまた様子は異なるかもしれない。

また、1授業に支援するTAの人数は、今回1クラス20人に対して3〜4人程度であったが、その程度で特に問題なく支援が行き届いたといえる。1週目は日立の教材を使った授業であったため、支援する人は日立の方も含めて7,8人になったが、逆に人数が多すぎて、支援する側も、授業を受ける生徒達も少し窮屈な感じの授業であった。また、先生側が希望する適正人数も2〜3人であり、ほぼ今回の人数と一致する。しかし、人数はTA個人の能力とも関係してくるかもしれない。

 

7.1.3.現場でのTAの立場

今回の実験は先生も生徒もTAにどのようなことをしてもらえるのかがわからず、TA自身もどのように支援していけばよいか、とりあえず見て分かる範囲でぶっつけ本番でやっているという大混乱の下でスタートした。そしてその経験から今後、このままTAが現場に入っていくとしたら、TAの立場という問題は必ず起こることが予想できる。

この問題のやっかいなところは、そのような状況になってしまうと、満足のいく支援はできず、現場の先生がTAの導入に疑問を持ってしまう可能性があることである。実際に、実験初期の状況に先生はTAに対して疑問を持っていたようである。今回は、実験が進むにつれて教室全体でそれなりの秩序ができあがっていったのと、実験中期にこの問題について先生方と話し合うことができたため、後半はそれほど問題とならなかったが、もしそのような機会がなかったとしたら、満足のいく支援ができずに最後まで突き進んでいってしまったかもしれない。

今後TAの立場について、どのような仕事をすべきか、すべきでないかを考える指標として、以下に今回の状況の考察を行う。

今回の実験で、TAが教室に入って行った仕事は、先生主導の授業における生徒へのサポート、マシントラブルへの対処や、休み時間でのマシンのセットアップ作業やソフトウエアのインストール作業である。

教材作成、カリキュラム作成など授業の内容に関して、TAは全く関与しなかった。TAはあくまで先生のサポートに徹していた。アンケートからも先生方は、内容に関して、「全く考えたことのない問題」であり、自分たちが作るものだと考えていることがわかった。

ただし、授業後の反省会を通して、TA達が先生方と一緒になって授業運営について話し合ったということがあり、積極的な意見交換がなされた。

この経験から、情報の提供という意味では、TAもカリキュラム作成に関われるし、そういった支援は有効だといえるのではないかと考えられる。しかし、責任を伴う教材作成、カリキュラム作成に関しては先生側も求めていないし、TA自身にとっても大きな負担となるため、行う場合は十分に検討が必要であろう。

 

7.1.4.先生とTAのコミュニケーションの重要性

今回の実験でTA達の支援の様子がよい方向に一変した時期があった。先生とTAによる簡単なミーティングと反省会が行われるようになったのがその時期であった。

実験当初、TAが教室に行くと先生は「よろしくお願いします」と言うだけであり、先生の期待は大きいが、TAはどこまで関わっていいのか終始分からず、自分なりに考えてぶっつけ本番でやっているという状況であった。後に先生もアンケートで「どう接したらいいのかわからなかった」と答えている。互いに遠慮がちでコミュニケーションがあまりにも少ない状況であった。

結果、当初は効果的な支援にほど遠い状況であった。今回使用したWebページ制作ソフト「Hotall」の操作方法などがわからないTAもいて、生徒の質問に答えられないこともあった。さらに、クラスの雰囲気や、マシン環境も自ら実践してみて体得するしかない状況であった。

 しかし、お互いが遠慮せずに意見を言い合ったとき、冒頭で述べたように、状況は一変した。先生が求めているものやクラスの状況などを聞くことができたし、先生もTAの状況を把握することができた。TAの緊張はほぐれ、生徒とうまくコミュニケーションがとれるようになっていったのである。

反省会で、この問題の背景に、以下にあげる2つの要因が隠されているという意見が出た。

1つ目に、TAの社会での認知の低さという問題があげられる。そのためにも前節で述べたように、TAの立場を明確にすることが重要である。今回、その土台があって初めて支援が成り立つものだと痛感した。

2つ目は、学校の授業というものがとても閉鎖的であるということである。先生と生徒しかいない授業において、先生は絶対的存在であった。そこにTAが入ってくるという状況の中で当惑する先生は必ずいるはずで、その状況を打破するのはとても骨の折れる作業であるにちがいない。さらに、先生から授業を受けるということに慣れてしまっている生徒達も初めの方は当惑している様子であった。

この問題は、支援期間が長い場合は起こらないかもしれないが、いつもそういう状況とはかぎらないし、実際の教育現場で先生がTAとの対話の時間を作ることはとても難しいという現状がある。しかし、TAと先生のコミュニケーションが欠如している状況では、効果的な支援はおろか、間違いなく授業の混乱を招くというのが今回の実験での結果である。先生のアンケートに「TAはいるだけではお荷物になってしまう」という意見があり、まさにそういった状況に陥る可能性がある。

 

7.1.5.生徒とのコミュニケーション

TAにとって生徒とうまくコミュニケーションをとれるかどうかは支援の正否に関わる問題である。今回の実験では一番難しい問題であることを認識させられる結果となった。

先生へのアンケートでの「うまくコミュニケーションをとれていたか」の結果は、「前半はそう思わない」であった。TAによって個人差はあったが、当初、大半のTAは生徒とのコミュニケーションに苦戦していたようである。学生の書いたレポート(詳しくは4章を参照)を読むと、「生徒から話しかけられることはなく、」「高校生は積極的に質問するのが苦手なようだ」「生徒達に前向きに話しかけ」「話しかける勇気がなく、うろうろしていた」などTA達が生徒とのコミュニケーション方法を模索している様子がうかがえる。

一方、生徒のアンケートをみると「授業が理解しやすくなったか」「授業が楽しくなったか」との問いに、多数の生徒がポジティブな反応を示していて、短期間の難しい状況でTAはそれなりの役割を果たすだけのコミュニケーション方法を自分なりに見いだしていたといえるのではないだろうか。しかし、「昼休みにもいてほしいか」「授業以外の相談に乗ってほしいか」との問いには全体的にネガティブな意見であり、授業の様子からも生徒はそれほどTAに期待している様子は見られなかった。このアンケートの結果からすべてを読みとることはできないが、おそらく、生徒の内側まで入ることができたTAは少なかったと推測される。

また、先生がTAに一番期待しているのも生徒とのコミュニケーションであり、「生徒に信頼されるようなTAが現れたら手放せなくなる」との話であった。そのため、アンケートでも「生徒は身近な存在になっていたか」との問いに厳しい評価、コメントを下している。ただ、今回のような短期間でうまくコミュニケーションをとるのはプロの教師でも難しいという話であり、「うまくコミュニケーションをとれていたか」の問いに後半は「そう思う」との感想を得ることができたのは今回参加したTAの努力によるところが多いのかもしれない。

 

7.2.TA制度の実施とその課題について、TAの視点から

 今までのように私たちはTAというシステムを戸塚高校で実験してみて、多くの課題を発見した。ここではそれらを集約、発展させて、制度としてTAというシステムが現在の高校の教育に導入されるにあたり、どのような点が考慮されるべきかを述べる。特に、TAという制度においてTAをする個人個人の視点から述べて、TAをすることは大学生、大学院生にとってどのようなメリットがあるか、またTA自身どのようなメリットを望んでいるかを中心に述べる。

 

7.2.1.TA自身にどのようなメリットがあるか

 TAという制度にあたり、支援する側であるTAにもなんらかのメリットを伴っていなければ、制度としては成立しえない。大学における単位、研究素材といった具体的なメリットはもちろんのこと教育をするという経験、人に教えるということの難しさなど抽象的なメリットなどメリットとして挙げればそれこそ個々人によって捉え方が異なる。このため、一概にこのメリットをもってTAを広く集めることは可能になると述べることはできないが、今回の実験においてTAからのアンケート、ヒアリングなどを含めたメリットとしていくつかを挙げ、今後の参考としていきたい。

 

7.2.2.TAに参加する動機

 個人としてみた場合、TAをすることが自分自身にとって何らかの利益を伴うからTAをするというのは自然である。これに基づき、TAを希望した動機という観点からTAのメリットを論じてみたい。

 まず最初にTAからのアンケートから、もっとも直接的に動機として聞いた質問を挙げる。詳しい結果は第五章をご覧頂くことにして、最も高いのは「自分の研究内容に関係していた」という答えであった。しかし、今回のTAは大学生が主であったため、普通の大学の研究室のような積極的な意味を持った研究とは異なる。その一方で二番目に多かったのが「面白そうだった」という答えである。これらを踏まえると、今回の実験においてTAをする動機の主となったのは「興味、関心」であると言える。このような動機はTAをより質の高くしていくという観点から見るとあまり歓迎されるべきではないかもしれない。しかし、今回のような実験の段階では後述する単位や資格、給料を制度として保証することもできず、そのようなメリットを期待するのは難しい。むしろ「興味、関心」から入ってTAになり、その後その興味、関心が深まっていくのはこの大学という場において自然な事ではないかと考える。

 ちなみに、実験の主体者となった私たちの慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスでは教職免許を取得することはできない。このため、教職に就くことに関心のある生徒はもともと他の大学に比べ全体としては少ない。しかし、様々な学問分野を横断したカリキュラムをうち立てており、私たちは様々なことに興味を持ち、主体的に活動していく傾向がある。前述のような結果もこのようなことが関係していると言える。一方では学芸大学などでは教育課程の大学生が高校生の情報教育を支援した。ここから言えることはTAをする母体である大学においても学生の関心が異なり、TAをする動機も個人差はあるものの大学において傾向があるという事である。

 

7.2.3.金銭面におけるTAの報酬

 今回のケースではTAを学生アルバイトとして扱い、給料を支払った。しかし、これから制度として実施していくことになると、場合によっては無給という可能性もあるかも知れない、逆にTAの質の向上をはかるためにより多くの給料を支払う場合もあるかも知れない。いずれにしろ、完全に何の実質的なメリットを伴わない場合、TAの数が確保できなくなる場合も発生しうる。このため、TAに対し何らかの給料は供出されるべきである。

 この際の問題の一つとしては金額の問題が挙げられる。今回のケースでは時給800円という金額を提示したが、金額の多寡についての不満は特に見られなかった。時給800円という額は大学生のアルバイトとしては平均的な額である。しかし、後述する単位というメリットを伴ったとき、単位がもらえるのであれば給料はいらないであろうとする意見も出てくるし、尤もだと考える。残念ながら相場としてここで額を提案するのは危険であると考えるし、相場を導くことのできる材料もないためここでは触れずにおく。TAにどれだけの給料が支払われるべきかは次のパラグラフで述べる支払う立場と、単位の問題から実際に学生の意見を聞きながら決めていくのが妥当であると思われる。蛇足ながら、大学ではなく、別の場所に行くのであるから交通費は支払うべきではないかというのが個人的な意見である。

 金額における第二の問題はどこから支払われるかである。今回のケースでは実験に伴う費用の中から捻出したが、いずれ制度として確立した時にどこから給料が支払われるのかは重要な問題である。TAをする現場である高校からというのも一つの意見であるが、残念ながら(額にもよるが)情報設備に注力すべきである高校がTAのための経済的な余裕があるとは考えにくい。TAをする大学から出すべきではないかとの考え方もある。しかし、TA制度が大学で行っている研究に確実に貢献している必要がある。となると、文部省・自治体などの政府であるが、今回はそれらへの調査を行っていないため、意見を述べるのは控える。いずれにしろ、額の問題と合わせても、この問題はTA制度っを実施するに当たってきわめて重要な問題となる。

 

7.2.4.単位・資格

 金銭をのぞいた具体的なメリットとして次に挙げられるのが大学の授業における単位である。今回のアンケートにおいても、給料の次に希望が高かったのが単位であった。大学生、大学院生がTAになるのであれば、授業における単位というのは妥当なように思われるが、以下に述べるような問題も存在する。

 まず第一にTAの質に関わる問題である。もし、TAをすることで単位が取得できるというのであれば、とりあえずTAをすることで単位を確保しようと考える大学生も現れうる。これにより、TAとしてどの程度成果を上げていくかを考えなくなってしまうこともあり得る。これにより、TAの質は低下してしまうことになる。この問題に対処するためにはどうすればいいのか?TAをすることではなくその課程、結果を踏まえてレポートを提出するようにするのも一つの手段ではないかと考える。しかし、一般的な大学生の傾向として単位を取得するということより、金銭における報酬の方が仕事に対する意欲は高くなる。これは授業に積極的に取り組む大学生は全体としては少ないということが関係し、授業の一環でTAをするということについてどのような態度で臨むかということになる。このように考えると、単位をメリットとして掲げるならば、意識の高い学生がTAとして高校に派遣されるのが望ましい。

 第二に、授業とTAの活動は異なるということである。つまり、TAを制度として確立させるならば、TAの活動は単位となるが、これは前述の質の問題を生じやすい。授業の一環とするならば、前述の問題を回避することは可能であるが、TAの活動と授業は別の時間、場所であり、TAをする大学生とTAをしない大学生の取得単位が同じになってしまう。各授業の単位は一定であるからである。これに対しては、授業の単位を履修するための選択肢の一つとしてTAを行うということが考えられる。研究発表、フィールドワークなど単位を取得するための多様な選択肢の中でのTAというのであれば問題は解決されうる。

 また、単位としてではなく一種の履歴として履歴書に書くことができる、または資格として生かすことができるなどのメリットもあるが、このためにはTAということが社会的に広く認知されなければいけない。このため、ここではそれらの議論は割愛させていただいて、TAが定着し、制度として広まった後の課題として宿題にさせていただきたい。

 

7.2.5.学習としてのメリット

 ここまで、有形のメリットを挙げてきたが、TAとしての経験がTAをした学生にどのような知識、考え方などをもたらすかについて考え、TAそのものの学習効果について述べる。

 まず、私たちの経験をてらして考えたとき、TAをした時の無形のメリットは「人に教えるということの体験」である。これには二つの側面があり、人に物事を教える困難さ、おもしろさを経験したということと、人に教えることによって自分自身の理解も深まったということである。これら二つは別々の側面でありながら相互に深く関わってもいる。

 人に何かを教え、そして何かを理解させるということは、極めて困難なことである。教師のような専門職に就かなくとも、私たちは何か仕事をするとき、誰かに何かを伝える、誰かに何かを教える、理解させるということを必ず行う。TAの経験は高校生にコンピューターを教えるということであるが、コンピュータについての知識は複雑でかつ広大である。TAがこれらを理解しているのは前提だが、果たしてそれをわかりやすい言葉で表現できるかどうか。もし、TAとしてコンピューターを高校生に教えることに困難を感じ、そして努力して高校生に何かを理解させることができれば、それはひとつの学習といえないだろうか。私たちは自身の経験からこのように感じた。

 前述したようにコンピューターの知識は複雑で広大である。このため、自分が理解したと思っていた部分でもいざ高校生に説明してみるとうまく整理できていない場合がままある。しかし、誰かに教えるときには自分自身は完全に理解して、整理されていなければならない。これは、人にある物事を教えるとき、同時に自分もその物事を学んでいるということができる。コンピューターに関しては特に日進月歩で技術が進んでいっているために常に学ぶ姿勢を怠ることはできない。TAをすることにより、コンピューターに関する知識を自分自身も学んでいるということになる。

 


7.3.今後のTA活動の実施形態について

 今回のTA実験を通じて、TAの存在が少なからず授業支援としての効果をもたらすことが確認された。そこで、次なる関心事としては、本プロジェクトの成果を一般化すること、すなわちTAを制度化する(もしくは、TAによる支援“体制”を確立する)、といった点が浮上してくる。ここでは、TA制度化の可能性について考えてみたい。

 文部省が199610月から19987月まで設置した、「情報化の進展に対応した初等中等教育における情報教育の推進等に関する調査研究協力者会議」の最終報告によると、学校を支援する体制の整備の一環として、学校外の人材の活用を提言している。その中で特に、「大学等においては、授業科目においてボランティア活動を取り入れたり、学生の自主的なボランティア活動を支援するなど、学生のボランティアを推進する大学等が増えてきている。今後、学校と大学等との連携により、学生ボランティアを積極的に活用することが期待され、国においては、どのような形態や方法で連携することができるか先導的な取り組みを支援していくことを検討すべきである。また、学校においては、ボランティアを受け入れ易い体制作りが望まれる」としている。従って、学校がボランティアとしてTAを受け入れることは、政策上認められ得ることであり、TA制度化を立案すること自体のハードルは無いものと考えられる。

 しかし実際問題としては、TAを一般化する際には検討しなければならない課題が多くある。先にTAの報酬面での課題について述べたが、ここでは主に学校がTAを受け入れる際に生ずる、諸問題を取り上げる。

7.3.1.TA導入体制の課題

 7.1.3でも指摘したように、当初先生方の間には、TAとはどんな立場で何をする人なのかわからない、といった根本的な疑問があった。裏返せば、学校内でのTAという存在に対する認知度は、殆ど皆無の状態だということである。またその延長として、TAを“学校として”受け入れることになると、TAを概念的に理解できない教員を説得する必要が出るとともに、職員会議での了承、校長の許可、責任所在の明確化、教育委員会への説明など、クリアしなければならない事柄が山積してくる。今回高校側は、「外部からの“実験(研究)”を、情報科で“受け入れた”」という立場だったため、そうした懸念材料は少なかったが、学校が主体的にTAを求める、あるいは政策的にTAの位置付けを定めるとなると、責任所在の明確化が最大の課題となってくる。

 一方、受け入れるTAの資質や人間性が、授業支援に足り得るものであるか、という点に対しても、教育活動の影響力を考えると、決して軽視できない問題である。教員ヒアリング結果を見ても、TAの資質に関する線引きの重要性が指摘されている。しかし逆に、線引きの固定化(資格保持者に限定する、など)はTAの門戸を狭め、「生徒とのコミュニケーション」という面で有能な人材を逃してしまう可能性もある。

むしろ、TAどうしのコミュニケーションを密にした上で、教員とTAとの間にきちんとした信頼関係を築き、各TAがそれぞれどんな場面で活躍できるのかを、情報を担当する教員・TAすべてで共有することが重要である。この点は線引きの問題以上に大きなポイントであり、それを踏まえて初めて、TAの有効性が確認できるのである。

 本プロジェクトにおいて、実験対象校である横浜市立戸塚高校の先生方は、極めて協力的であったと考えている。しかしこのことは、情報担当の先生方の個人的な尽力が大きかった点に、依存している部分が多い。すなわち、先生方とTAとの間で数回に及ぶ対話、そしてそれを通じての信頼関係の醸成が、本プロジェクトに成果をもたらした重要な土台になっている。日常業務で忙しい中、絶えず先生方から惜しみない対話時間の提供があったことは、特別なケースと考えて良く、一般的に期待できることではない。闇雲にボランティア・TAを導入するのではなく、教育活動で最も重要な「信頼関係」を蓄積するために、どのような手順を踏めば良いか、を検討しなければならない。

 

7.3.2.今後のTA活動発展方法

 

 以上の点を総合すると、TAによる支援活動は、それ自体の効果は確認できるものの、一般化し、政策上の位置付けを決めるには、かなりの困難が予想される、と言える。むしろTAの発展は、引き続き大学が中心となって草の根的な展開を探り、経験知を増やしながら、活動の成果を広げて行く方法が、最も良いと思われる。本来的には、「TA支援体制のあり方」を提示し、「こうすればTAが成功する」という雛型を提供できればベストであり、我々もそうしたものを研究の成果として出せるのではないか、と考えてきた。しかし、プロジェクトを進めるうち、事はそれほど単純ではないことを理解した。単に支援体制が築ければ良いのではなく、むしろ問題はその中でいかにTAと教員がコミュニケーションを図るか、であり、そうしたノウハウの積み重ねが、良き支援を生み出して行くのである。

 従って、ボランティア・TAのいずれにせよ、政策上の裏付け(そうした支援を、学校ないし担当教員の判断で受け入れることを、行政側は妨げない、というお墨付き)だけあれば良く、あとは大学側で自主的に支援組織を設置し、信頼関係の築けた学校から支援を行い、徐々に裾野を広げながら、成果を積み上げて行くことを提案する。もとより、信頼関係の構築には対話と打ち合わせが重要であるが、今回の場合のように、学期途中の合間を縫って行うことには、教員・TA双方に負担が大きい。学期開始前などに予め対話を行い、参加するTAの資質や人間性についても、大学と学校との議論の中で、各校の事情に合わせた対処をして行くことを求めたい。

 

7.3.3.情報面での学校支援

 

 また、今回のプロジェクトを通じて、学校現場には情報教育に関する情報が全くないという、皮肉な現状を把握できた。この現状は、各高校が他校との交流や情報交換を殆どしていない、という点に起因する部分が大きいが、現実問題としてそうした機会も時間もないという事情がある。「学校支援」と銘打ち、様々な情報を提供するホームページや、メーリングリスト・掲示板作成サービスなどが、実験的に設けられたりしているが、実際にはこのようなサービスの存在が教員に認知されていないだけでなく、教員はホームページを見る時間も、メーリングリスト作成のためのメンバー集めの時間も持っていない。すなわち、そうしたサービスと教員との橋渡し役がいないのである。

 そこで、大学・学生による教員支援を、TAに限定するのではなく、橋渡し役やデータベースの構築、データ・情報の提供といった、より広い視野での支援に発展させることを提案する。橋渡し役は、信頼関係が築けてこそ可能となることであり、学生がこの部分を担当する意義は、大きいものと考える。

 

7.3.4.報酬面の課題

 

 こうした草の根活動は遠回りのように感じられるが、情報教育を軌道に乗せ、単に操作方法教育に陥らない、クリエイティブな授業内容にさせて行くためには、制度的な枠組みを固定してしまうよりも、はるかに充実した取り組みに発展できるだろう。

 但し、報酬面での検討は引き続き行う必要がある。特に、交通費・給料いかんに関わらず、その資金を誰が負担するのか、という点は重要な問題である。職業経験として履歴書に書けるようにする方法も、公的に認知され得るかどうか、課題が残されている。とは言え、単に「学生にとっても、経験が深まる機会になるので良い」ということで、完全なボランティアを期待するのは夢物語であり、学生のモティベーションが持続せず、現実性に乏しい。TAの制度的な面を議論する際には、こうした報酬をどうするかが大きな課題であり、今後TAに関する研究が必要な分野は、この点であると指摘しておきたい。

 

8.おわりに

 今回のプロジェクトは、1999年度補正予算「教育の情報化」推進事業の一環として、高校の情報教育の場に大学(院)生がTAとして参加し、授業内で生徒支援を行いながら、自らも学ぶ、という体制作りを目指したものであった。試行錯誤の部分が多かったものの、全体を通して、生徒からの反応、先生方からのコメント、TA自身の達成感のいずれを見ても、プラスに評価できるものとなっている。従って、支援活動はまずまずの成果をあげられたのではないか、と考えている。

 こうした取り組みを、他校にも広げて行ければ、自然な形で開かれた学校を実現できるのではないかと思う。そのために、引き続き支援活動を行うことを目指し、初等中等教育における情報教育が軌道に乗ることを切に願いたい。

 

謝辞

 

 今回の実験に際し、試行の場を提供していただいた横浜市立戸塚高等学校の植草透公先生を始めとする情報担当の諸先生方、TAとして参加してくれた大学院生・大学生に、厚く御礼申し上げます。