以上の事柄を実証するために実際に高齢者にゲームを行ってもらい、その反応を調査する。
4. 研究内容
◆ ゲームの概要
商店街の福引きで特賞を当てた主人公は、沖縄旅行に出発します。日本一平均寿命の高い県として知られる沖縄。主人公は、その沖縄の様々な名所を訪れ、現地の人々と出会い、沖縄独特の文化の中から長寿の秘訣を見つけだします。
このゲームの目的は、沖縄を旅行するなかで、長寿の秘訣を探しだし、主人公の長寿度をあげることにあります。
◆ ゲームの構成
本ゲームは、写真の取り込みを中心とした「観光シーン」と、イラストで描かれた主人公が活躍する「ミニゲーム」の2種類で構成されている。
・観光シーン
観光シーンでは、沖縄の名所の写真、動画を見ることがでる。基本的には、次へ進むためのボタン、前に戻るためのボタンの2つのボタンだけを使ってゲームを進めるが、随所に行動選択画面がでてくる。行動選択画面においては、コントローラの十字キーを押して選択肢を選ぶという行動が必要となる。選択肢の結果によっては、長寿の秘訣を見つけることができたり、見ることのできる画像が変化する。
・ミニゲーム
観光シーンの途中でミニゲームが始まることがある。シューティングゲーム、アドベンチャーゲーム、RPGゲーム、アクションゲーム、スポーツゲーム、レースゲームの計6種類、7個のミニゲームが存在する。操作方法は、それぞれのゲームで異なるが、始まる前に必ず説明が入る。ゲームをクリアーすることによって、長寿度が上がったり、特別な品物を手に入れることができる。また、ゲームがクリアーできなくても何度も挑戦できるようになっている。ゲームの難易度は、ゲームを進めるに従って難しくなる。
◆ 高齢者向けゲームということを配慮した工夫
・ゲームを楽しむための工夫
日本福祉大学久保田競教授の研究によると、高齢者の興味は、自分の健康、お金、色気である。本ゲームでは、この調査結果を参考にして、沖縄の旅行を通じて自分の健康を高める(長寿度を上げる)ことを目的としたゲームを作成した。
また、沖縄の写真、動画などをふんだんに取り込み、あたかも実際に旅行に行っているかのような疑似体験をしてもらう。旅先での様々な人々との出会えたり、沖縄独特の文化に触れることができる。
・操作方法についての工夫
まず第一に配慮したのが、誰でも抵抗なくゲームで遊んでもらうために、操作方法を極力簡単にしたことである。まず、ボタンを押しているだけで沖縄の美しい写真を見ることのできる観光シーンから始まる。そして、能動的に選択肢を選ばないと先に進めない場面が登場する。いくつかの選択肢を選んだ後は、より複雑な操作を必要とするミニゲームへと移る。ミニゲームもゲームの進行とともに複雑な操作が求められる。
ミニゲームの操作方法
・画面構成についての工夫
画面の解像度をあげ、文字を大きくした。画面は木、布、和紙などをテーマにデザインを行い、見た目に柔らかい印象を与えている。また、操作を行うたびに何らかの音を鳴らすことによって操作したというフィードバックを与える。
現在のバージョンでは、まだ完成していないが、正式版では、音声を入れることによって文字を読まなくても済むようにする。
・ゲームを通じて情報社会に対応するための工夫
コンピュータゲームで遊ぶことによってコンピュータに触れるということに慣れだけでなく、ミニゲームの中で情報にアクセスするために必要な事項を学ぶこともできる。
ゲーム全体を通して
ゲーム全体を通し、選択肢を選んで行動を決定するという行為を何度も繰り返す。
買い物ゲーム
ミニゲームの一つ買い物ゲームの目的は、沖縄の名物チャンプルを作るための材料を買い集めることである。市場にいる人たちに話しかけることによって、チャンプルを作るためには、どの材料が必要なのか、どの店で買うと安く材料が買えるかということを情報を得ることができる。情報を集め、まとめることによって、どの材料を買うかを判断しなくてはならない。
ここでは情報を集め、その情報を整理して状況を把握するということを学ぶことができる。
中村家探索ゲーム
中村家探索ゲームでは、中村家の様々な場所を探索し、秘伝の料理書を探し出すことである。料理書を探し出すためには、中村家の中を移動しなくてはならないが、中村家の構造が階層構造になっている。階層構造とは、たとえば以下の図において、AからCに移動するためには、A→B→Cの順番に進む必要がある。また、CからEに移動するためには、C→B→A→D→Eの順番に移動する必要がある。このようにデータが階層構造化されているものの例としては、インターネットのウェブページ、データベース型のCD−ROM、パソコンのフォルダ構造などがあげられる。中村家を探索するうちに自然と階層構造に関しての基礎知識を身につけることができる。
5. 研究メンバー
研究代表者 大岩 元(慶應義塾大学 環境情報学部 教授)
研究分担者 久保田 競(日本福祉大学 情報社会学部 教授)
〃 熊倉 健介(慶應義塾大学 大学院 メディア研究科)
〃 後藤 剛志(慶應義塾大学 環境情報学部)
〃 松澤 芳昭(慶應義塾大学 環境情報学部)
〃 安藤 一紀(慶應義塾大学 環境情報学部)